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客席放浪記

深夜寄席

2015年9月26日
新宿末廣亭

 いつも満員の深夜寄席だが、最近では松之丞が出る時はいつにも増してお客さんが多い気がする。今夜も案の定、椅子席も桟敷席もいっぱい。立ち見が出ている。

 今夜は開口一番がその神田松之丞。「今夜はメモリアルな深夜寄席です。四月に二ツ目になった鯉丸が初のトリを取ります。出てきたら『待ってました!』と声をかけてください。深夜寄席にはジンクスがありまして、初トリで受けないやつは、一生売れないと言われております! これだけのプレッシャーをかけてはおりますが、これでダメになるようなら、やつも大したことない!」
 いきなり凄いハードルを上げちゃったけれど、これも後輩思いなのかもしれない。これで奮い立つのが芸人というもの。
 マクラで講談の修羅場(しらば)調子は何を言っているのかわからないということを語って『谷風の情け相撲』へ。このマクラがまさかこの講談のなかの伏線になっていようとは思いもしなかった。マクラ部分を差し引くと10分程度のなかに、笑いの要素もふんだんに詰め込んだ、わかりやすい一席。これは短い持ち時間の時に最適な松之丞の飛び道具のようなものかもしれない。

 昔々亭A太郎は背が高い。冗談で2m50cmと言っているそうだが、そんなではないにしてもかなりな身長。小さいころからスポーツ好きで野球やサッカー、ラグビー、アメフトをやっていたとマクラで語る。どこまで本当かはわからないけれど。そこから以前にも一度聴いたことのある野球選手の噺『表と裏』へ。これ、良く出来た噺で私は大好き。

 昔々亭桃之助は、釣りなんかには興味のない男がご馳走になりたくて、釣り好きの人の所に訪ねていく『釣りの酒』。「で、どんな川が好きですか?」「古手川裕子」「そんな教わった通りのこと言ってちゃいけない」「じゃあ多岐川裕美」「同じカテゴリーじゃないか」

 盛大な拍手で迎えられた瀧川鯉丸。松之丞にかけられたプレッシャーは感じてないようで、マクラで笑わせる余裕も見せて入ったのが『ねずみ』。この左甚五郎噺、二ツ目になりたてでは、やや難易度が高いかなと思ったが、初トリにこの噺をぶつけてくる意気込みはよし。若干噛んだりしたところもあったが熱気で乗り越えてみせた。これでもっとこの噺に慣れてくれば、きっといい持ちネタになっていきそう。
 初トリの瞬間が見られるというのも、この深夜寄席の楽しみの一つ。深夜寄席が人気になるわけだよ。

9月27日記

静かなお喋り 9月26日

静かなお喋り

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