直線上に配置

客席放浪記

深夜寄席

2015年11月28日
新宿末廣亭

 瀧川鯉八は自身の代表作のひとつ『暴れ牛奇譚』。この噺を聴くのは二回目。最初に聴いたときは「なんなんだ、この噺は」という印象ばかりが強かった。今まで聴いたことがないような落語。どうにも付いていけなさ感を覚えたのだが、二回目になるとこの不思議な噺を面白く聴けるようになった。民話のような噺なのだが、妙に悪意が渦巻いている。長老同士のエピソードもブラックだが、何といってもタミコとレイの関係がエグい。美人のレイと、お世辞にも美人とは言えないタミコ。容姿の違いにコンプレックスを抱いていたものを、ブスをブスとはっきり言われてしまい、生贄にはレイを贈られるだろうと思いきや、牛にとっての美人はタミコだとさせる不条理。笑いと皮肉が混ざり合った不思議な噺。聴けば聴くほど味が出てくる面白い噺だと思う。またいつか出会えるといいな。

 神田真紅は『深夜寄席』では、自分の趣味の噺をすることにしているそうで、これまでにもゴジラや特撮ものの噺をかけていたらしい。今夜は先日、映画『バック・トゥー・ザ・フューチャー2』でマイケル・J・フォックスのマーティが未来に行った2015年10月21日を迎えたということで、ロバート・ゼメキスが『バック・トゥー・ザ・フューチャー』を作った裏話を講談にしてみせた。いわば『バック・トゥー・ザ・フューチャー製作秘話』。『バック・トゥー・ザ・フューチャー』の脚本を書いたものの、どこの映画会社からも相手にされなかったところをスティーヴン・スピルバーグに救われ製作にこぎつける。エリック・ストルツ主演で撮り始めたものの途中で違和感を感じて、マイケル・J・フォックスに交代。さらに社長から内容に関する横槍が入るという難関。果たしてゼメキスはどうするのか。「これから先が面白くなるのですが、お時間!」 おいおい。

 桂夏丸が、テレビコマーシャルに出た落語家のことを語りだした。永谷園の即席みそ汁の先代小さん。毎日香の円楽。ペヤングの小益、志の輔。それからエメロン石鹸やアテントの円右。懐かしいなぁ。この人、よくCMに出ていた。でも後藤散の風邪薬っていうのは知らなかったなぁ。そこから『懐かしのCMソング』。CMソング第一号のコニカの『ぼくはアマチュアカメラマン』から始まって花王石鹸、ミツワ石鹸、キリンビール、オリエンタルカレー、ノーシンなど、私も知ってるものから、聴いたことないものまで。みんな古いものばかり。『深夜寄席』に来る若い人は、どれも初めて聴く歌だろうなぁ。

 春雨や雷太は、自分の生まれは横浜だが両親は熊本の八代(やつしろ)だということから、来月、八代で落語会をやることになり、そのために作った新作落語をネタおろし。なんと今夜は四人とも新作だ。八代といえば矢代亜紀の生まれ故郷でもあるが、また連歌で有名な西山宗因(にしやまそういん)の生まれたところとしても有名。そこで雷太が作った落語は『連歌の家』。母親とふたりで浅草に住む母子家庭の男の子。街の人まで巻き込んで連歌を作って遊んでいる。やがて男の子は母親とふたりで別れた父親がいる八代へ行くことになる。「実はここからが面白くなる・・・はずですがまだできていません。この続きは来月行われる八代での落語会で!」 おいおい! アハハハハ。

11月29日記

静かなお喋り 11月28日

静かなお喋り

このコーナーの表紙に戻る

トップ アイコンふりだしに戻る
直線上に配置