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客席放浪記

神田阿久鯉・神田松之丞
『天明白波伝』連続読み 初日

2018年5月7日
深川江戸資料館小劇場

 神田阿久鯉、松之丞の神田松鯉姉弟による『天明白波伝』連続読みの会。
 師匠松鯉の持っている『天明白波伝』は全十席。もとはもっと長い噺らしくて、十席の中で唐突に登場する人物がいたり、その後どうしたかわからなくなってしまう人物もいるらしい。ともあれ師匠に教わった全十席をふたりで三日に分けて口演。今日はその初日。私は第八話の『八百蔵吉五郎』くらいしかナマで聴いたことが無い。

 第一話『徳次郎の生い立ち』と第二話『稲葉小僧』神田松之丞
 『天明白波伝』は泥棒たちの噺だが、神道徳次郎がこの噺の核となるらしい。その徳次郎は若い時に剣術と易の師匠の弟子になる。剣術は得意だったが易はどうしても極めることができず、師の元を去ることになる。泥棒が獄門張り付けの刑になっている現場を見て義賊になる決心わした直後、三十両の金に困っている人と出遭い、最初に泥棒に入った場所とは・・・。唖然とする展開で始まったこの噺、はたしてどうなっていくのか。

 何人もの泥棒たちが出てくるこの噺、全部揃うまでが大変そうだが、第二話『稲葉小僧』は照明を落とし、その稲葉小僧新助の登場。猫騒動で有名な鍋島の屋敷に忍び込んだ稲葉小僧。奥方の寝姿に見とれて気付かれてしまい、命からがら逃げだすも回状が廻ってしまう。潜伏先の吉原で花魁に見つかり、そこもなんとか脱出。この辺のサスペンスはさすが松之丞で聴きごたえあり。それに続くコミカルな場面も楽しかった。

 仲入りを挟んで、第三話『金棒お鉄』神田阿久鯉。この一席には泥棒が出てこない。ありゃという感じだが、のちのち深い関りがになる登場人物が出てくるらしい。阿久鯉は『天明白波伝』全体をコミカルな噺と捉えているそうで、松之丞とは演出がかなり違うようだ。とにかく明るい。女郎屋をやりながら金貸しまでやり、さらには兇状持ちだという金棒お鉄が、半年前に五両貸した相手に利子を含めて十五両耳をそろえて返せと迫る。今すぐ返せないなら娘を貰うと言い出す。そこに登場したのがこの家の大家。この大家がお鉄と対決することになるのだが・・・。いや〜、これは実に楽しい噺だった。
 このあとの噺でまた金棒お鉄は出て来るそうだが、どういう形で出てくるのか、そして徳次郎はじめ、ほかの泥棒たちがどんな活躍を見せてくれるのか、明日と明後日が楽しみ。連続読みは楽しいな〜。

5月8日記

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