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客席放浪記

春風亭昇太独演会「オレスタイル」

2015年7月26日
紀伊國屋サザンシアター

 春風亭昇太の落語に出てくる登場人物は、みんな楽しそう。人生を楽しんで生きている人物ばっかりで、ほとんど悩みなんて持っていないように思える。昇太の落語を聞く楽しみは、そこにあって、絶対に深刻にならない。そんな楽しさを求めて昇太の落語を聴きに行くといってもいいのではないかと思う。

 まずは挨拶代りのフリートーク。新橋演舞場で大地真央と共演して、大地さんがとても美人で幸せだったということを、うれしそうに話す。それが自慢話のようでいて嫌味にならないところが昇太。

 昇太が三席演る前に、立川生志が上がる。マクラで、巡業先での昇太と志の輔のエロ本騒動の様子を話してくれたが、そこでの昇太も実に楽しそう。得な性格だねぇ。ネタは『道具屋』

 昇太、一席目は「落語には孝行者など出てこない」と言って『二十四孝』。中国の孝行の教えをごっちゃにしてしまう、この噺の乱暴なクライマックスは、昇太が演ると、そのメチャクチャさを昇太と共に楽しんでいるような感じになる。罰当たりな噺なんだけど楽しいんだよね〜。二十四孝の教えに登場する人物たちはみんな貧乏人ばかり。「お金儲けて親孝行しようっていうのはいないの?」って、本当にそんな気になるよなぁ。アハハハハ。

 二席目はネタおろしの『品川心中』。こちらも遊郭で歳を取って人気が無くなり、金に困って、客と心中しちゃおうという女郎の噺。金さえあれば世の中なんとかなるのかね〜。心中相手に、誰にも迷惑かけないように独り者を選ぶ。「この人、独り者だけど、いずれ人間国宝になるだろうしね〜。でも勲章貰いに行くのに普通、奥さんと行くものだけど、どうするのかね〜」。独身者昇太のセルフギャグだ。

 三席目が『不動坊』。お滝さんと結婚できると聞いて大喜びの男が新婚生活をあれこれ妄想する様子が独身者の昇太らしくて楽しい。子供嫌いだったのに、突然、外で遊んでいる子供たちをかわいいと思ったり、人生がバラ色に思えたりするあたりの描写もいい感じ。

 三席終えて、「これからも自分の好きな事だけやって生きて行きます」と言う昇太は実に楽しそう。落語を聴きに来るお客さんの中には、毎日いやいや仕事に行っている人も多いだろうに、昇太みたいな生き方ってうらやましい。きっと結婚するなんていうことよりも楽しいことが、この人にはたくさんあるんだな。

7月27日記

静かなお喋り 7月26日

静かなお喋り

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