2012年3月28日 池袋演芸場三月下席昼の部・新作台本まつり 開口一番、前座さんは柳家いっぽんで『桃太郎』。頑張ってね。 三遊亭ぬう生『恩師の家庭訪問』は、出産のために休職した女教師の代りに教鞭を取ることになった、この学校の古くからの教師が家庭訪問に行く噺。訪問前に自分の好物などを事前に生徒にプリントして渡すなど、ちゃっかりした先生。あっと驚く結末も楽しい。 柳家小ゑんは、三遊亭圓丈作の『フイッ』。もう圓丈自身は演らなくなってしまったとかで、今はすっかり小ゑんのネタになってしまった。小ゑん曰く、「ただ、(お客さんが)途中でついて来られなく恐れがあるんですよね」と言うだけあって、聴き手を選ぶ噺かもしれない。私にはちょっと筒井康隆風に感じられる噺だ。 三遊亭丈二は『リサイクル課長』。リサイクルを推進する公務員の課長が亡くなる。残されたチンピラをやっている息子のところに、課長の部下がやってきて、環境に優しい葬式を提案する。火葬はCO2を出すからと、土葬や水葬や鳥葬にしたらどうだと提案する。どうせヤクザはよくやっているだろうと無茶苦茶な事を言い出す噺。一理あるかもという気がしてくるな、って、うはははは。 ホームランの漫才。いつもながら、ディズニーランドで漫才をやったことがあるという雑談風の話題で笑いを取り、結婚式の神父のネタ。可笑しいんだよねえ。 林家きく麿は、古典『手紙無筆』を改作した『おかま無筆』。タイ人の男から送られてきたタイ語で書かれた手紙を受け取ったおかまちゃん。タイ語を読めると言う、先輩のおかまさんに読んでもらおうとする噺。おかま言葉をしっかり研究している。 林家正雀の『てるてる坊主』は、江戸時代を舞台にした人情噺。子供が出てくるとホロリとした味わいの噺になりやすいといった見本みたいなもの。これは公募で入賞したものらしいが、この手のものが賞を取りやすいのだろうかと言ったら失礼だろうか。三笑亭夢丸新江戸噺もそうだが、聴く方としては、こういう人情噺はやや食傷気味になってきた。悪くないんだけどね。 仲入り後は、三遊亭圓丈。小ゑんが『フイッ』を演ったからか、こちらは小ゑんの『ぐつぐつ』を。圓丈版を四年ぶりくらいに聴いたが、随分と変えたみたいだ。もう設定だけ受け継いで、ギャグなんかガラリと変えている。インターネットを見ると、『新ぐつぐつ』としているようだし。もともと哀愁漂う噺なのだが、それが圓丈にかかると、もっと哀愁感が強調されている。その割に所々で入れる「ぐつぐつ、ぐつぐつ」という台詞というか効果音が妙に明るい。 三遊亭白鳥は新作台本コンクール応募作の『金のキョロちゃん』。自分なりにかなり書き替えをしている途中の試作品といった感じ。高座にあがるときにレコーダーを置いていたから、まだまだお客さんの反応やら、自分の噺を客観的に聴き直して書き直すつもりらしい。 膝は曲独楽の三増紋之助。末広の曲で東京スカイツリーを独楽に乗せて、やんやの拍手を貰っていた。 トリは入船亭扇治『夏の縁側』。佃島の土地を売るのがを拒否している頑固なおじいさん。娘が大阪に行っているうちに、ついに等価交換でマンションの最上階に住んでいる。土地を売る条件におじいさんが要求したものとは・・・。東京の下町の夏の情景が浮かんでくる描写が心地いい。 3月29日記 静かなお喋り 3月28日 このコーナーの表紙に戻る |