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客席放浪記

2012年10月16日シベリア少女鉄道スピリッツ『ステップアップ』(赤坂Red Theater)

 演劇でいかに遊べるかを実演している劇団。人によっては演劇を「なめてる」と感じるかもしれない。でも所詮演劇なんてそんなものじゃないかと私は思う。高尚なものだと思う方が間違いなんじゃないの? だから、ろくでもない自己満足しているような、変な演劇が蔓延(はびこ)るんだ。

 舞台はどこかのビルの屋上といったセット。
 客席に座ると、正面に芝居のイメージポスターが投影されている。タイトルとイメージ写真、それに「なりたい自分になる!」というキャッチコピーが書いてある。
 それと気になるのが、舞台の上手の壁に出ている文字、「ステップアップ2」。はて、何なんだろう?

 芝居が始まる。ここは精神病院の屋上だということがわかる。そこに入院している患者の家族や医師、そして患者らが出入りして、何やら意味が繋がらない会話を交わしては去っていく。
 そして気になるのは、例の右上の「ステップアップ」のあとの数字。2であったのが、ときどきドーンと太鼓が鳴ると数字が、3、4、5、6と、ひとつずつ上がっていく。時には太鼓が三つ四つ鳴って、数字が急激に増えたりする。かと思えば今度は、ガシャーンとガラスが割れる音がして数字がひとつ減ったりもする。

 さて、これはいったい何なのか? いつもの事だが観客の推理が続く。いったいこれはなんなんだ? この劇団、時に漫画やアニメ、あるいはゲームを知っていないとオチがわからないときがある。どうもゲームかなあと思い始めた上演時間の半分くらいまで来たところで、突然に変化が訪れる。
 登場人物たちが流れを止め、「これからどうしようか」という感じになり、そして徐々に変化が始まる。数字が120を超えたあたりだ。この芝居が何をやろうとしているのか観客たちに薄々と伝わってくる。
 そのあとは、クスクス笑い。かと思うと、ときに爆笑といった展開が続いていく。
 これに乗れれば、あとは結末まで一直線だった。最初の数字が2だった理由もわかっくる。

 例によって芝居は唐突に終わる。カーテンコールなし、拍手なしも、いつものこと。

 そのときによって、ちょっとがっかりして帰ることもあるが、今回は面白かった。バカバカしいといえばそれまでだが、しかつめらしい顔をして観るばかりが演劇じゃないと言っているようだし、そんな演劇界をシニカルに笑い飛ばしているのがこの劇団なんだよね。

10月17日記

静かなお喋り 10月16日

静かなお喋り

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