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客席放浪記

新宿末廣亭二月下席夜の部

2013年2月27日

 18時40分ごろ入場。
 高座では林家正楽が、お客さんの注文を切っていた。高梨沙羅。「スキー。ジャンプですね。どう切っていいかわからないけど」。ジャンプ台から飛び上がったところ。鮮やか!

 紙切りが終ったところで、お茶子さんに案内されて前の方の席へ。
 三升家小勝『替り目』が始まった。クルマ屋に乗せられるくだりはカットで、♪お金が欲しい〜 と繰り返しながら帰ってくる。ほんと、そんな歌でも歌いたくなるよねぇ。

 便所という意味の日本語はたくさんある。「便所、トイレ、手洗い、雪隠、厠、手洗い・・・。閑な所と書いて閑所(かんじょ)。まさに閑な所。これが訛って勘定。便所に行くを、勘定をぶつと言った地方があった」で始まる『勘定板』三遊亭歌之介が演ると、この田舎者が妙にカワイイ。汚い噺だが、思わず笑ってしまう。そんな味わいがこの人にはあるなぁ。

 仲入り後は、橘家文左衛門『のめる』から。先日も鈴本でこの人のこの噺を聴いたばかり。最近の得意ネタかな。

 すず風にゃん子金魚の漫才。この人たち最近はすっかり金魚ちゃんの暴走だけで引っ張っていくパターンが定着しちゃったようだ。もう、にゃん子ちゃんの言ってる事、聞いてないもんなぁ。アハハ。

 相撲取りから落語家になった三遊亭歌武蔵。「相撲取りが転職すると、たいてい豆腐屋になるんですが・・・、わからないでしょうが」。『ちはやふる』ね。でも一般的には、ちゃんこ屋かなぁ。今日は、そんな経歴と身体を生かした『大安売り』。「手の痕が残るような張り手!」と言って広げる手の大きなこと。あんな手で引っ叩かれたら、すっ飛んじゃうよ。

 桂ひな太郎『締め込み』。ダメ〜な新米の泥棒というのは落語の定番だが、この噺の泥棒は同じダメな新米でも、結局、夫婦喧嘩の仲裁までしてしまうんだから、そんなにダメなやつでもないんだよね。人生経験だけはありそうだ。

 翁家勝丸の太神楽は、花籠毬と傘回し。失敗しても何事もなかったかのように、また口上からやり直す。ビデオ撮影の編集でもあるかのよう。ウハハハハ。

 トリの三遊亭白鳥は円状作の『イタチの留吉』の大胆な改作『新イタチの留吉』。元ネタは出所したヤクザが、久し振りのシャバの様子に驚くという噺。これをヤクザを落語家に変えている。どうやらイメージとしては、先代の古今亭志ん馬。おっかなかった師匠らしい。落語の演目、実在の落語家、落語界の事件などがてんこ盛り。落語初心者には解り難そうだが、それでも疾風怒涛のごとく突っ走る。
 マクドナルドに入った鼬家留吉が「モスバーガーをくれ」と言いだすと、それは出来ないと説明される。「それは立川流が東京の寄席に出られないという事と同じだな」 「ハンバーカーの西京焼きをくれ」という難題も、できないと言われると、「それは、東京の寄席にすず風にゃん子金魚は出られるけれど、今いくよくるよは出られないということだな。よしもとだからな」
 サゲも円生襲名問題を盛り込んだものだが、これもあとから「これじゃあ、解らない人もいると思いますので、もうひとつさっき考えてきました」と一般受けするサゲも追加たが、これも上手い!

 白鳥は今まで異端視されていて、寄席では受けないと思われていたけれど、いやいや、どうしてどうして。「どこに出しても“恥ずかしい”落語家」なんて悪口を聞いたことがあるけれど、もうそんなことは言わせない。この努力は凄い。絶対に、「どこに出しても“恥ずかしくない”落語家」だよ。

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