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客席放浪記

新宿末廣亭三月上席夜の部

2013年3月1日

 春一番が吹いた日。
 いつもは背中を丸めて「寒い、寒い」と寄席の木戸を入るのに、今日は気分も軽い。

 仲入りから入る。

 落語芸術協会の場合は、仲入り後のクイツキに二ツ目を起用することが多い。今席は雷門花助がクイツキを務める。おっ、以前から聴きたかった『八問答』だ。世の中のことすべてに八の数字が絡むという知ったかぶりの男と、それを聞く男との会話。ポンポンと進んで行く会話の妙が楽しい。この噺を演る人は少ない。上方の『八問答』は継承者がいるようだが、東京の『八問答』はかなり演り手が少ないはずだ。これ、登場人物がふたり。会話だけだし、前座噺としてもいけるんじゃないか。もっとみんな演ればいいのに。

 北見伸とスティファニーのマジック。北見伸のテーブル空中浮遊に、スティファニーは今夜は瞳ナナさん。「ナナ? ハチじゃないの?」 「瞳を加えればハチ」 「瞳は二つだから合わせるとキュウだろ」 「いや、ウインクしてる」

 続く山遊亭金太郎『替り目』。ヨッパライの旦那が郵便ポストに絡んだり、車夫に絡んだりしながら帰ってくる。「梶上げますよ」と言われて、「火事なんていらねえよ」とか、「どこ行きます」と言われて、「平壌」なんて言いたい放題。こういう手に負えないヨッパライを最初に描くと、この噺深みが出るんだよね。

 おやおや、3月に入ったから三遊亭左円馬『長屋の花見』が解禁だ。「長屋中 歯を食いしばる 花見かな」でサゲる。もうそんな季節なんだなぁ。

 ボンボンブラザーズの曲芸が膝がわり。寄席の曲芸というと太神楽か曲独楽が多いから、ボンボンさんのハイカラな曲芸は明るくて引き立つね。

 トリの三遊亭栄馬が「外は雨が降っております」と言うので、またかと思う。寄席の定番の挨拶。このあと「私の噺が終った頃に止むという事です」と続く。それが「どうも、それが止みそうになくて」と言うから「ええーっ」と思う。今夜雨になるなんて聞いてなかった。
 帰り、どうしようかなぁと思っているうちに『井戸の茶碗』に入った。この善人ばかりしか出てこない噺を聴いているうちに、雨なんてどうでもよくなってくる。

 ハネて外に出たら、本当に雨だ。

 へへっ、「春雨じゃ、濡れて参ろう」ってね。

3月1日記

静かなお喋り 3月1日

静かなお喋り

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