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客席放浪記

末廣亭九月上席夜の部

2013年9月5日

 今月の上席は、浅草、上野と観て、今度は新宿。こんなに定席に行くことは初めて。末廣亭は19時になると割引になるから、それを見計らって行く。

 高座は仲トリの三笑亭夢太朗が上がっていて『たがや』をやっている。侍が刀を抜こうとするが錆びついていてしまっているる「砥ぎ(都議)に出さない、市議にも出さない、区議にも出さない」

 仲入りで空いている席を見つけて座る。

 クイツキは鉄砲玉のように元気のいい桂宮治。まだ二ツ目になって間もないのだが早くもご贔屓が付いている。出てきた途端に「待ってました、戸越銀座!」 どうもおっかけの人がいるらしい。マクラも堂に入ったものでドカンドカンと笑いを取る。
 そして入った『つる』も、オリジナルのギャグを詰め込んで勢いが半端じゃない。「爆発の老人が・・・」「ダイナイマイト巻いてるのかい?」「そうテロリストの老人。ハマコーと知り合って・・・」「物騒だね」「はるかカナダを眺めていると・・・」「カナダが見えるの?」「そう視力250」

 Wモアモアの漫才はいつもの、立ち話。今日はタレントのカツラ疑惑まで触れちゃって、危険な立ち話。

 春風亭柳太郎の新作落語は『万引き息子』とでもいったものか? シッョピングセンターで万引きした息子を引き取りに来た両親。息子のバッグの中からは大量のペットボトルの飲み物と共に、包丁、カッターナイフ、アイスピック、手錠などまで出てくる。強盗も出来そうだね。
(この演目は後日、『鞄の中』あるいは『鞄の中身』と言われていることがわかりました)

 三遊亭遊雀はもうこの人鉄板の『熊の皮』。一時期のように無理に笑いを取りに来なくても、腹の底から可笑しさが込み上げてくる。静かにやっても受けるようになってきた。

 鏡味味千代の太神楽。毬の曲芸と傘の曲芸。正二郎と同じピンでやっているが、この人たちは華があるからピンでも十分に通用する。

 トリに上がった春風亭昇太。8月31日の協会の寄合いの話から、鰻屋に行った話。さらに浅草サンバカーニバルの話と、マクラを15分くらい。これがやたら可笑しい。もうこれでお腹いっぱいになったところで『花筏』。鯉を生きたまま食べてしまう提灯屋さんと、卵を殻の付いたまま食べてしまう地元の漁師の、イタチとヘビの闘い。凄いんだけど、ふたりともどこか精神がひ弱なのが可笑しい。
 サゲまで言って頭を下げる。普通はここで緞帳が降りてくるのだが、昇太は拍手が収まるのを待って、また話し始めた。どのネタをやるか考えないで高座に上がり、とりあえず寄合いのときのことを話そうと思って喋りだしたら、話が浅草サンバカーニバルのことになっていって、本場ブラジルの女性の踊りを表現するつもりで手を揺すっていたら、相撲の動きを思いだして、『花筏』になったとのこと。寄席の定席で噺のあとにこういうことをやるのはまず今までなかったろうが、昇太の素顔が見られた楽しい演出だった。

9月6日記

静かなお喋り 9月5日

静かなお喋り

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