末廣亭九月下席夜の部 2013年9月25日 開口一番前座さんは桂しゃも治で『牛ほめ』。前座修業頑張ってね。 『初天神』は演者が子供に工夫を凝らすことによって、どんどんいろいろな『初天神』の子供が出現するようになった。春風亭昇々の『初天神』の子供も、ほとんど怪物のよう。この怪物化した子供を笑いに持って行かれるかどうかが落語の難しい所。私は笑えたが、どうも今日のお客さんは一日を通して笑わないお客さんばかりだった。こうなると熱演が虚しくなるだろうが、演者は落ち込まないで欲しいなぁ。こっちは十分に楽しんだんだから。 マグナム小林のヴァイオリン漫談。ヴァイオリンでいろいろなものの音を出すセットでは、相撲の呼び出しと行司が入った。本場所中だものね。 瀧川鯉太は『松山鏡』。ああ、これが鯉朝がいつだかマクラで言っていた、鯉太に教えたという『松山鏡』か。そのエピソードを知っていて聴くと可笑しい。 古今亭今輔は、先月の独演会でネタおろしをしていた『サムライ検定』。これは寄席むきだから、いい噺が出来たと思う。 宮田陽・昇の漫才。「倍沢直樹の半返し」「逆だろ!」。時事ネタも多く入れ込んでいる。 三笑亭夢花の『二人旅』のおばあさんは、やたら騒々しくて大きな声で叫ぶ。今日は笑わないお客さんばかりなので、なんとか笑わせようとして余計に力が入るようだ。 続く三遊亭笑遊はどんなネタをやらせても客席を爆笑させる人なのに、この人をもってしても今日の客は笑わない。『やかん』の最初の方、魚根問の部分で、「楽屋に陣中見舞に来てくれた人が『今日の客はやりいいか?』」 ギタレレ漫談のぴろきでさえ、今日はやりにくそう。お客さんに、いまやったネタが面白かったどうか確認しながらやっている。こういう自虐ネタっていうのも笑いが来ないと虚しくなるだけだもんなぁ。 三遊亭遊史郎は『猿後家』。こういう噺も客から笑い声が入らないと辛い噺。猿のような顔をしたおかみさんという設定だから、ただただそんな人を卑しめる噺になりかねない。客が悪いんだってことなんだろうけど。 柳亭楽輔は『火焔太鼓』。リズムのいい口調で気持ちよく聴かせる。それでも今日の客は笑わないなぁ。 仲入り後のクイツキが橘ノ圓満で『替り目』。この辺からお客さんの数も増えてきて、そこそこ笑い声も増えてきたが、それでも今日のお客さんは静かだ。 意外と受けていたのが次のニュースペーパーのコント。政治ネタを扱うコント集団だが、今日のテーマはオスプレイ。アメリカ人パイロット役のふたりが風刺を飛ばしまくる。案外今日のお客さんは寄席に慣れちゃってる人で、聴きなれた落語くらいでは笑わないのかもしれない。こういう目新しいものの方が受けるのかも。 上方からのゲストは桂春蝶。『山之内一豊と千代』は、女流講釈師にはお得意のネタだが、春蝶のは、ふたりの出会いから始まって、いくつもの工夫が盛り込まれている。特に後半の馬が喋るというアイデアは上手い。信長は名古屋弁だし、これは楽しく作ってあるなぁ。 「富士登山に行ったことがありまして、ペットボトルの水を一本用意して行ったんですが、五合目でそんな少しでは足らないだろうと言われまして、そしたら100円で買えるvolvicが五合目では300円で売ってる。そんな高いのはいらないと思ったら、六合目では400円。ということは上に行くに従って高くなるってことだろうと思って、ここで何本も買い込んだんですよ。そしたら七合目で300円。それ以降頂上まで行っても300円」心理戦にやられたんだなぁ。桂米福は『時ぞば』。こちらは心理戦を仕掛けて負ける噺。 ボンボンブラザースの曲芸があって、いよいよトリが瀧川鯉朝。「寄席ではよく出るネタだが、これをトリで演る人はいないだろう」と『反対俥』。これを演ることを目標に11kgダイエットしたというだけあって、身のこなしも軽やか。偉い! これぞ芸人魂。 9月26日記 静かなお喋り 9月26日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |