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客席放浪記

新宿末廣亭九月下席夜の部

2014年9月23日

 滝川鯉朝の、ちょっぴりちがう寄席。今回の目玉は三つ。ひとつは、上方からの日替わりゲスト。これは毎回恒例になってしまったことだけど、うれしい。でも、交通費、宿泊費はどうしてるんだろう。他人事ながらちょっと心配してしまう。ふたつめは、鯉朝トリのあとに大喜利の時間を作って、先輩の師匠に芸談をお聞きしようという企画。そして三つめ、写真撮影タイムを作って、出演者の写真を自由に撮ってもらおうという企画。ほかにも、終演後に本日のネタ帖を貼りだすという、寄席では初めての試みもある。今回の文章の演目表記は、それを元にすることができた。これって、うれしいサービスなんだよねぇ。

 木戸をくぐると、もう瀧川鯉朝のマエセツが始まっていた。これだから、ちょっぴりちがう寄席には早く来ないとね。

 開口一番、前座さんは古今亭今いち『初天神』。声が大きくていいね。前座修業頑張ってね。

 なんだか人を煙に巻くような落語を演る瀧川鯉八。こういうのを面白がれるかどうか、人によって分かれそうだが、私は結構好き。今日のは、お兄さんとの会話から生まれるおかしさを描いた『ぼくの兄さん』。「百人乗りの船に百人乗ったら沈んじゃった」「中に妊娠していた人がいたんじゃないの? それで百一人」「いや、潜水艦だったんだ」

 北見伸ステファニーのマジック。先日、浅草演芸ホールで観た内容より地味。そうか、浅草の方が広いから、スケールの大きいのができるんだな。小屋のサイズによって内容は変わるのかもしれない。

 瀧川鯉太が『松山鏡』に入りそうな感じだったのが、小噺で終わってしまった。最初の指南所の小噺。終演後貼りだされたネタ帖には『琴三味線』になっていた。なるほど、こう表記するんだな。

 桂枝太郎『自家用車』は、クルマを持っていない男が、ボンネットの中に自転車を入れて、友人にペダルをこがせて走らせるクルマを用意する噺。彼女がカーステレオでサザンを聴きたいと言いだすので、ペダルをこいでいる男に歌わせると、『サザンカの宿』を歌いだすというのが、なんとも可笑しい。

 ヴァイオリン漫談のマグナム小林。ほう、今日は『ラデツキー行進曲』をタップを踏みながらやっていた。けっこうレパートリーあるんだね。

 笑福亭里光は、東京で『呑める』という『二人癖』。なるほどネタ帖表記も『二人癖』になってる。

 三遊亭遊雀『悋気の独楽』。妾のところへ行くとは言えない旦那、「これから寄席に行ってくる」は、この噺のお決まりの台詞だが、「今日は、鯉朝さんがトリのあと、桃太郎師匠の芸談があるそうだよ。師匠機嫌がいいから長くなる。おそらく午前4時ごろまでかかるだろうよ」

 江戸家まねき猫は、いつもの『音入り枕草子』。まねき猫の場合、イヌとかネコをやらせると、とても愛嬌のある顔になる。そこが猫八とはちょっと芸風の違うところ。せせらぎの音とか雨粒の音なんて、動物以外の音も入って来るのも特徴。

 上方からのゲストは桂雀々。この人の『代書屋』は二年ほど前にも聴いた事がある。「一行抹消」の部分は無く、スピード感で突っ走る『代署』。ポン!がサゲになるのは、おそらくこの人だけだと思う。

 「落語家になろうというんで、どんどん弟子入りしてくる人が増えてます。なにしろ入社試験ありませんからね」。桂竹丸は、ある落語家の弟子がバカだというマクラで笑わせて、お得意の『石田三成』。「石田三成は算盤が得意でした。願いましては、ひとつなり、ふたつなり、みつ・・・」。石田三成の伝記を語りながら自由なお喋りをする地噺。もう鉄板のネタ。

 仲入り休憩になって写真撮影タイム。今日は桂文治の予定が、なぜか楽屋に現れないという事で、桂竹丸が代演(?)。サービスで、立川談志、三遊亭円楽(先代)の高座に上がる真似を見せてくれる。こういう企画、楽しいね。

 仲入り後は、三笑亭夢吉『殿様団子』から。明治になって殿様でいられなくなって団子屋を始めたというバカバカしいけれど、ありそうな噺。串に刺すのが面倒で、串を横に置いたまま団子が出てくるというのが何とも可笑しいけれど、今、コンビニなんかでも串なしの団子って売ってる。関係ないけど。

 ヒント青年団のコント。共産党ならぬ降参党から立候補するという選挙ネタ。「アジェンダはなんですか?」「アジェンタって何だ?」「公約ですよ」「コウヤクはツロンパスだよ」

 「なんで魚って、さかなって言うんですか?」「漢字とカナで書いて見せて、どっちがいい? と聞いたら、さあ〜、かなかな」。へえ〜、昔々亭桃太郎『魚根問』は初めて聴いた。「タコは、なぜタコって言うんですか?」「タコは、昔、日本人は食べなかった。タコクの人が食べた」

 やなぎ南玉の、曲独楽。いつもどおりの安定した芸。

 トリは瀧川鯉朝『お父さんの手紙』。これは初めて聴いたな。お父さんからの偽手紙をこっそり本の中に挟み込んでおいた男に、それを呼んだ男が真に受けて感動のあまり奢ってしまう。ところが、その手紙をどこに置いたか忘れてしまっているうちに・・・という噺。軽くて聴いていて気持ちもいい。これはちょっと拾い物だった。

 さあて大喜利。昔々亭桃太郎と桂文治に、春風亭柳昇のエピソードを聞こうという、芸談というか楽屋話企画。今日は先代文治のことも含めての話になった。内容は、ちょっとインターネットに書くには差し障りのあることも。だから書けない。でも面白かったなぁ。
 ここで、仲入りで果たせなかった、文治撮影タイムも行われた。

 この日撮った写真は、『静かなお喋り 9月23日』の方に載せておきました。

9月24日記

静かなお喋り 9月23日

静かなお喋り

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