新宿末廣亭五月上席夜の部 2015年5月3日 昼の部のトリが桂歌丸ということもあって、超満員。札止めで入場ができない状態。入れ替え無しとはいえ、昼の部が終るとドッとお客さんは帰るだろうからと、ジッと並んで待つ。ゴールデンウイークで、寄席も大盛況だ。チケット販売が再会されたのでチケットを買い求めて入場。 開口一番前座さんは、桂伸しん。『子ほめ』を始めたが、子をほめるところまで行かないで終了。持ち時間5分だったらしい。前座修業頑張ってね。 次に上がった二ツ目の三笑亭可女次の持ち時間は、どうやら10分。長いネタはやらずに、数秒で終わる老夫婦の小噺ばかりをズラーッと並べる。例えばこんなの。じいさん「今日は風呂にバスクリンを入れたのかい?」 ばあさん「あたしがオシッコしたんですよ」 持ち時間の短い時って、こういうのいいね。 漫才のWモアモアは出て来るなり、メイウェザーvsパッキャオ戦の結果やら、ブロ野球速報、今日の天皇賞の結果までの、彼らのいう「立ち話」が始まってしまった。ようやくいつもの「子育てがたいへんだ」のネタが始まる。「私も金稼がなければなりませんからね」「これが金稼いでいるって言えるのかよ! ここに出たってたかが知れてるだろ。歌丸会長がみんな持って行っちゃうんだから」 三笑亭可龍も持ち時間短く、漫談のみ。高座から見たお客さんの様子をあれこれ面白おかしく語る。そして披露興行ということで、立ち上がって踊り『せつほんかいな』で華を添える。 池袋演芸場の出番を終えて急いでやってきた瀧川鯉朝。「まだ頭の中がとっ散らかっています」と言いながら、柳家金語楼の作を現代風に作り変えた『英会話』。 北見マキのマジック。コヨリで左右の親指を縛ってもらって、マイクスタンドや輪っかに腕を通すお得意のネタ。縛られる時の指の細工があるはずなんだけど遠くからではわからない。今度、もっと近くで観てみたいなぁ。 春風亭柳橋が、この位置で『不動坊』を始めたぞ。この長い噺をどうするんだと思ったら、湯屋のところまで。 一方で三笑亭夢太朗は『たがや』。これは寄席サイズで収まるし、大きなネタのような風格もある噺。長い間刀の手入れなんかしていなかったお侍。刀を抜こうとしても錆びついてしまっていて抜けない。「トギに出さなかったどころか、区議にも市議にも出なかった」 東京ボーイズと出番交替で、ここで俗曲の松乃家扇鶴。『ストトン節』などを歌って、いつもの。「女の人に甘い声だされると男は弱い。『棄てちゃ・・・いや〜ん』。さあみなさん、ご一緒に」。時間配分に失敗したのか「私の持ち時間あと二分。一年は早いけど、この二分が長い。ここで上がってしまってもいいんですが、こないだ早く上がってしまったら楽屋で百叩きの刑。時間調整です」と、三味線で何やら弾いてお時間。 おっ、三笑亭可楽は『臓器移植』だ。臓器屋という、ちょっとブラックなお噺。この噺、嫌う人もいるけど、私は割と好きなんだけどね。 仲入り前が三遊亭小遊三。『夏泥』。このとぼけた世界を無理なく聴かせてしまう小遊三。一文無しのふてぶてしさ、それに乗せられてしまう泥棒の哀れで優しい心情。これが無理なく出せるのが、この落語のキモだろうなぁ。 仲入り後は口上。新真打笑松改メ春風亭小柳、朝夢改メ三笑亭小夢、夢吉改メ三笑亭夢丸を中央に、三遊亭小遊三、春風亭小柳枝、三笑亭可楽、三笑亭夢花らが並ぶ。司会は三笑亭夢花。 小柳枝が、小柳という名前の来歴を語り、最後に「名前なんてどうでもいいんですけどね」と言ったことから、今回の口上はすっかり「名前なんてどうでもいい」というフレーズが行き交うことになってしまった。可楽が、自分が入門したころには、夢楽、可楽しか三笑亭の亭号を名乗る噺家はいなかった。今では三笑亭が増えて喜ばしいと語れば、「名前なんてどうでもいい」と混ぜっ返される。朝夢が小夢になったことで名前を小さくしたように思われるだろうが、わざと小を付ける人がいる。小三治は以前はさん治。それにわざわざ小を付けた。今や人間国宝。なんて言えば、これまた、「名前なんてどうでもいい」と混ぜっ返される。大爆笑の口上だった。 口上のあとは、新真打三笑亭小夢。「私、ここに来る前に、行きつけの高級イタリアンに寄ってきました。甲州街道沿いにある、サイゼリアという店なんですがね、そこでカルボナーラを食べました。ある人がこれをポラギノールなんて言ってましたが、似てますね」。似てない、似てない。麺類のマクラから『時そば』へ。逆流性食道炎を起こしそうなそばって、凄そうだなぁ。アハハハハ。 春風亭小柳は『皿屋敷』。ポッチャリ体型の小柳。こういう噺は観ているだけで笑っちゃう。名前の通りダイエットしちゃったらつまらなくなってしまうかも。これからもこの調子で。 三笑亭夢花は『魚根問』。この噺は人によって、どんどん新しく魚の名前で作って行けるから楽しい。「アジというのは何でアジと言うんですかね?」「アジは本来、北の海に棲むサカナ。ある日南の海に紛れ込んでしまって、アジ、アジ、となったことからアジになった」「ではサメは?」「サメは本来、南の海に棲むサカナ。ある日北の海に紛れ込んでしまって・・・」 春風亭小柳枝は出て来るなり、「小さな柳の枝と書いて、こりゅうしと言います・・・まあ名前のことはどうでもいい」。アハハハハ。もう季節は過ぎたと思われるが、なぜか『長屋の花見』だ。大家さんに呼ばれて、お茶けと、たくあん、大根のしんこで花見に連れて行かれる店子たち。「行かなきゃ店賃を払え」と脅されて、「連れってってくださ〜い」「連れてかないでくださ〜い」 ボンボンブラザースの曲芸は、ヒゲじろうさんの細長い紙を立てる曲芸、末廣亭でやると、桟敷席まで乱入するんだよね〜。この人たちは、ここで観るのが一番面白い。 トリの三笑亭夢丸が出てくると、一際大きくて長い拍手。その拍手が止まらない。ようやく疎らななって来た拍手の中から、「喋ってもいいですか?」の夢丸の声。生まれて初めてのトリの高座。さぞ感無量だろうなぁ。さて、初のトリ。高座に何をかけるのかと思ったら、『竹の水仙』。へえー、夢丸にしては意外な選択だなぁ。これを持ってきたか。俗称、東海道と言われる着物を着た男。53個所くらいツギがあたっている。左甚五郎噺の代表作のひとつ。これを夢丸持ち前の明るい全開の楽しい噺に仕立てた。先代とはまるで違う芸風だが、この二代目、落語界でも人気の落語家になって行く予感がする。応援しているよ〜! 5月4日記 静かなお喋り 5月3日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |