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客席放浪記

新宿末廣亭九月下席夜の部

2015年9月24日

 恒例、瀧川鯉朝の、ちょっぴりちがう寄席。昼の部が終る間際に入場。昼の部のトリ桂伸治が『お見立て』の最後、墓参りの部分を演っていた。サゲを言って昼の部がハネたところで前の方に移動。空いている席に座った。夜の部が始まる前に、きっと鯉朝本人の挨拶があるだろうと待っていたのだが、なかなか現れない。今日は開演前の挨拶はなしかなと思った時、私服姿の鯉朝が息を切らして客席前方に姿を見せた。「新宿西口から走ってきました。西口から末廣亭まで、頑張って走れば3分半で来られるんですね」。アハハハハ、ご苦労様。この主任のやる気が気持ちよくて、十日間の興行に一度は来てしまうんだよなぁ。

 開口一番は柳亭楽ちん。「前座修業は・・・らくちんです」。いいね〜! そうこなくっちゃ! 前座修業、その意気で頑張ってね! ネタは『黄金の大黒』

 瀧川鯉八は、誰も演ったことのないような新作落語の新しい方法論を実践している。『やぶのなか』という噺は、姉夫婦と、その弟、その弟の彼女が出てきて、誰と誰が話しているのかを、あえてボカして噺が進行して行く。これを面白いと取るか、わかり難いととるかは、聴く人それぞれだろうが、私はあえて、この実験に挑戦している鯉八の意欲を素晴らしいと思う。

 鏡味初音の太神楽。傘の曲芸。もうすっかり安定してきたね。

 春風亭昇太一門の、春風亭昇吾は、この芝居から二ツ目昇進。羽織が着られるようになったのがうれしくてしょうがない感じ。「これから羽織を脱いで噺に入りますから、羽織を脱いだら拍手してください」。羽織を脱ぎだしたところで客席から大きな拍手。がんばってね〜。ネタは『道具屋』

 それを受けて出てきた真打の桂枝太郎も、「私も話の途中で羽織を脱ぎますから、拍手よろしく」。三遊亭白鳥の『河童の手』だ。若旦那が家を出るところで羽織を脱ぎ始めた。すかさずお客さんが拍手。『河童の手』は三つの願いテーマの落語。枝太郎、これでひとつ、願いを使ったな。

 東京丸・京平の漫才は、いつもどおりグズグズ。客いじりとセリフ忘れでアンチョコ出して来たりしているうちに終ってしまった。アハハハ。

 瀧川鯉太『ぜんざい公社』。この建物は裏口のドアばかりで、表側にドアがない。「これがほんとの、お・も・て・な・し」

 三遊亭笑遊『替り目』は、女性に教える三つ指講座が色っぽい。座って三つ指を突いた位置から腰をちょっと上げて、その腰を30度スライドさせて落とす。なるほど、この所作は色っぽいや。

 北見伸スティファニーのマジック。終始無言。なんか喋ってよ〜。

 立川談幸『目黒のさんま』。「殿、野駆けなどいかがでしょうか?」「うん、たまにはいいな。して、どこへまいろうか?」「目黒などいかがでしょうか。山あり谷あり、エンペラーもございます」。

 『小言幸兵衛』春風亭小柳枝が演ると、幸兵衛がいい人過ぎる感じになってしまうなぁ。きっと小柳枝っていう人もそんな人なのかも。「で、お花の宗旨は? えっ! イスラム教スンニ派!?」

 春雨や雷太『古着買い』は初めて聴いた噺。買い物上手の兄貴を連れて買い物に行くのは『壺算』のよう。そして後半の啖呵は『大工調べ』を思わせるやりとり。面白い噺が聴けた。

 コントD51。いつものおばあちゃんコント。卒業した小学校を訪問しにきたおばあちゃんだけど、とんだオチがありました。

 上方交代出演枠は、桂三風。客席参加型落語『テレショップパニック』は、テレビの通販番組が戸別訪問にやってくるという噺。お客さんもテレショップの効果音役になって、商品の性能や価格に驚いてみせる。楽しいね〜。

 三遊亭圓馬は、落語らしい落語の定番『粗忽長屋』。この噺、きっと演る方が楽しいんだろうなぁ。

 やなぎ南玉の鮮やかな口上入りの曲独楽。いつもながら凄いやね。

 トリの瀧川鯉朝、左甚五郎噺が始まったので、これはお得意の『竹の水仙』だなと思っていたら、ちょっと様子が違う。子供が客引きをしている。あっ! これは『ねずみ』だ。『竹の水仙』が、どちらかというと、はっちゃけた噺なのに対し、こちらはしみじみと静かに聴かせる。こういうトリを鯉朝で聴いたのは初めてかも。鯉朝のこんなトリもまたいいもんだなぁ。

9月25日記

静かなお喋り 9月24日

静かなお喋り

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