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客席放浪記

新宿末廣亭十一月上席夜の部

2016年11月1日

 19時からの割引を待つ列の最後尾に付く。今日からの十日間は、神田松鯉の『赤穂義士伝』の抜き読み。いよいよ今年も師走に向かっているなと感じる時期になった。

 「♪沖の暗いのに 白帆が見ゆる あれは紀の国 やれこのこれわいさのさ みかん船じゃえ」
 神田紫は、『かっぽれ』の歌詞にも出てくる噺を講談にした『紀伊国屋文左衛門 みかん船』の一席。なんかね〜、みかんが売れ残っている紀州のみかん業者から、みかんを買い付けて(買い叩いたんじゃないないだろうな〜)、危険承知で船乗りに札束(じゃなくて小判)で顔叩いて嵐の海に漕ぎ出して、江戸までみかん運んで(いくら吹っ掛けたんだ?)大儲けした大阪悪徳商人の噺にしか聞こえてこないんですけど〜。って私の方の感性がおかしいのかしら?
 いっそのこと、最後に『かっぽれ』踊って欲しかったな〜。

 仲入り後のクイツキは、コント青年団。つい先日も観た、出所したばかりのヤクザと、工事現場でガードマンのアルバイトをしているアニキのコント。「アネさんは今どうしてなさいます」「まさに極道の妻といった人。捕まったよ」「えっ、何かあっんだですか?」「万引きで掴まてな。取り調べで出身地を訊かれて、群馬って言えばいいものを上州って言ったものだから、ジョウシュウハンにされてしまった」

 「入浴剤に凝ってまして、バブ使ってるんです。血行をよくして疲れが取れるんです。先日入れたら泡が出てこないで、黄色と黒の塊が浮かんできた。よく見たらバブじゃなくて、玉子とワカメの固形スープでした。風呂に浸かって、私、スープの具になった気持ち」
 桂歌春『たらちね』。「自らの姓名を問いたもうや」「えっ、水屋の清兵衛?」。きっと落語好きな男なんだね。

 ボンボンブラザースの曲芸。いつもの。

 「三大講釈と言われてまして、『伊達騒動』、『太平記』、そして『赤穂義士伝』。その『赤穂義士伝』も、『本伝』、『銘々伝』、『外伝』とある。私が持っているのは、合わせて六十席ほど。この十日間で、その中から十席、好きなところだけ選んでお送りしたいと思っております。これを、いいとこ読みと申します」。
 神田松鯉
の『赤穂義士伝』初日は、『赤穂義士伝 松の廊下』。実際はどうであったかは定かではないが吉良上野介は『赤穂義士伝』では悪役として描かれる。「浅野内匠頭が挨拶をしても。鼻でフン。これを芝居の方では『鼻でフン忠臣蔵』と言います。
 松の廊下の刃傷沙汰のあと、今でも残る竹橋の平河門(不浄門)から出された内匠頭は、愛宕下の田村右京大夫上屋敷で切腹することになる。ここは田村町という町名で戦後まで残っていたが、今は新橋四丁目。私は田村町に叔父が住んでいて、田村町の叔父ということで馴染みがあったのだが、今は田村町なんて町名があったなんて誰も知らないんだろうなぁ。
 『赤穂義士伝』の序盤、フラストレーションはせかりでカタルシスのない部分だけれど、講談で聴いたのは初めて。
 この先の九日間、本伝、銘々伝、外伝が取り混ぜてネタ出ししてある。聴いたことない噺も多い。ま、この先、来年三月までは講談は義士伝をやる機会が多くなるから、どっかで聴けるだろう。

11月2日記

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