新宿末廣亭十二月下席夜の部 2017年12月25日 開口一番前座さんは、橘家かな文で『やかん』。前座修行頑張ってね。 柳家さん光の『ん廻し』は、いろいろ工夫があって面白い、「新婚さん新幹線三番線」。これ9個か。そして、アンパンマンの歌のなかには「ん」がたくさん出てくるのがあるというのも初めて知った。 漫才の ホームランはふたりとも60代。小さいころテレビは高くて一般家庭ではなかなか買えなかったという話題から、子供の頃に見たテレビドラマの主題歌の話。『月光仮面』『忍者部隊月光』『七色仮面』。私も同世代だから歌えるよ。 寄席の世界では、「スる」という言葉を嫌い、縁起をかついで、すへて「あたる」にするから、「すり鉢」は「あたり鉢」、「髭をする(剃る)」は「髭をあたる」と言うなんてマクラはよくやるけど、クスリはどうなんだろう? クアタリなんて腹壊しそう。金原亭馬玉もそんなマクラから、縁起かつぎの噺『ざるや』。 春風亭勢朝は地噺『袈裟御前』を演りながら、得意の漫談。「このハゲーの豊田議員。名前がマユだけに、発覚してから病院に籠もった。我(蛾)が強かった。ついには解雇(蚕)された」。 東京ガールズの邦楽バラエティ。とっつきにくい邦楽を楽しく聴かせてくれる。『相撲甚句』のあとは、お笑い相撲。「ひが〜し、銀行員。に〜し、お客さん。はっけよい、のこったのこった。引き落としで銀行員の勝ち」。 開口一番の前座さんが一番多くかけるネタはおそらく『子ほめ』だろう。今日は『子ほめ』が出なかったので、柳家一九がこの位置で『子ほめ』。やはり年季の入った『子ほめ』は面白く聴ける。 「年末になると今年の十大ニュースなんてやってますが、今年も不倫多かったですな。『一線は越えてません』なんて言った人もいる」と、桂ひな太郎は不倫噺『紙入れ』。 アサダ二世のマジック。古くからある手品、縁の糸。不思議だな〜。いまだに私はタネがわからない。 林家錦平は『不動坊』の湯屋まで。 今日は桟敷席に小さな女の子がひとりいて、おとなしく観ているが、落語はまだわかる年にはなっていないようで笑い声は聞こえてこなかった。それが三遊亭歌之介が上がって師匠の円歌宅の話しをしていたときのこと。「師匠は大きな犬を飼ってました。アイヌ犬のハナちゃん。アイヌ犬なのに寒さに弱い。ストーブ焚いた部屋でぐったりしている。これじゃホットドッグになっちゃう」で笑いだした。「楽屋であの子を誰が笑わすか話題になっておりました」。 仲入り後のクイツキは橘家蔵之助だが、これは珍しい落語『猫と電車』。私は初めて聴いた。猫目線になるところも出てくる。昨今は猫ブームだから、お客さんに受けそう。 笑組の漫才。「私ら内海好江の弟子だったんですが、師匠が61歳で亡くなってしまいまして、それを引き取ってくださったのが志ん朝師匠。ところが志ん朝師匠も、これまた4年ほどで亡くなってしまいまして、引き取ってくださったのが志ん五師匠。その志ん五師匠も7年ほど前に亡くなってしまう。連続殺人犯と呼ばれております。志の輔師匠にお会いしたときにこのことをお話したら、『今度ウチの師匠のところに来ないか』と言われまして」。アハハハハ。 柳家小里りんは、師匠の先代小さんそっくりな落語を演る。『長短』。まるでコピーを見るよう。気の長い人を演るとき、これだけのんびり喋る演り方は、最近の人はやらないなぁ。 春風亭一朝は『尻餅』を聴かせてくれた。年末には一度は聴きたい噺。 ストレート松浦の曲芸。中国独楽、踊る棒、ジャグリング。 トリはむかし家今松で『三井の大黒』。左甚五郎ものとしては『ねずみ』や『竹の水仙』はよくかかるが、『三井の大黒』は滅多にかからない。彫り物のねずみが動いたり、花が咲いたりといった、ありえないけれと派手な噺とはちがって、どちらかというと地味な噺だから、あまりかからないのかもなぁ。久しぶりに聴けてうれしかった。 12月26日記 静かなお喋り 12月25日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |