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客席放浪記

2012年8月17日鈴本演芸場八月中席夜の部

 前座も二ツ目も無しで、いきなり真打の柳家甚語楼から。前座さんたちには悪いけど、たまには聴く側も苦行になってしまいかねない開口一番が無いのもホッとしたりして。とぼけた味わいの『猫と金魚』にニヤリ。

 三増紋之助、紋ちゃんの曲独楽。風車は今年もひまわり。これも風物詩になってきたなあ。

 「一朝懸命に演ります」で始まる春風亭一朝。このお馴染みのフレーズをお客さんに先に言われて演りにくそう。これはマナー違反ですよ、お客さん。知ってることを自慢したいんだかなんだか知らないけど、いつものフレーズをやらせてあげるのが真の落語好きなんじゃないかな。ネタは『壺算』

 桃月庵白酒『夕立勘五郎』。出てくる浪曲師の面白さで笑わせる噺だが、白酒のは、浪曲師が出番中に孫からかかってきた携帯電話に出てしまう。アハハハハ。「こういうこともありますから電源は切ってくださいね」というひと言も忘れない。

 柳亭市馬は名調子の『蝦蟇の油』。こんな声のいい蝦蟇の油売りはいないやね、

 ロケット団はいつもの四文字熟語からロンドン・オリンピックの話題あれこれ。最後は癌告知ネタ。私の場合、医師は何の躊躇もなくいきなり告知したけどね。ハハハ。

 隅田川馬石『四段目』。こういう芝居の噺は、演者が芝居好きだとやっぱり気持ちの入り方が違うね。

 柳家喬太郎の出囃子で客席が熱を帯びるのが感じられる。明石家さんまと一緒に携帯電話ゲームのCMに出ている武井咲がカワイイというマクラでドッと笑いが来る。喬太郎から武井咲なんて名前が出てくる意外性が可笑しい。ネタが『初音の鼓』。恥ずかしそうに「コン」と鳴いていた三太夫が、途中から吹っ切れるところがなんともカワイイ。

 仲入り後の時点で進行が20分押し。食いつきの鏡味仙三郎社中の太神楽は、三人それぞれの芸を見せて、さっと戻っていく。時間調整にはうってつけの芸になってしまっているのは残念だけど、貴重な存在。

 柳家権太楼はこの時期かける人が多い『青菜』。「あんまり暑いんで、昼寝して風呂行った帰りだ」と言う建具屋さん。この気持、最近になってわかるようになった。去年まではどんなに暑くても仕事だったもんなあ。

 林家正楽の紙切り。鋏試しの線香花火に、お客さんからのお題、牛若丸、禁酒番屋、スカイツリー、オリンピックを涼しい顔でチョキチョキ。内心はどうなんだろ。汗だくだったりして。それを見せないクールさが、毎年ヒザに起用される理由なのかな。

 トリは柳家さん喬『鴻池の犬』。もともとは上方の噺。さん喬の犬は東海道を江戸から大阪まで旅をすることになる。さぞや疲れたことだろうなあ。でもこの長旅の様子、長編アニメにでもなりそうだけど。

8月18日記

静かなお喋り 8月17日

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