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客席放浪記

鈴本演芸場十二月中席夜の部

2012年12月15日

 仲入り中を狙って入場。

 ペペ桜井のギター漫談。このところペペさんの言っている『さくら』という曲の不思議な構成について耳を傾ける。四小節ごとで進行することの多い日本の曲の中で、この曲は変わった構成をしている。二小節ごとに不思議な進行のメロディーになっているようだ。

 “さくらさくら やよいのそらは”で四小節。ところが次は“みわたすかぎり”で半分の二小節しかないまま、次に行ってしまうと言う。というか、“みわたすかぎり”までの六小節がひとつのように思える。
 これをメロディーで二小節ごとに分けてみると

さくらさくら Aメロ
やよいのそらは Bメロ
みわたすかぎり Cメロ
かすみかくもか Bメロ
においぞいずる Cメロ
いざやいざや Aメロ
みにゆかん エンディング

 つまり、これは二小節が単位になった、日本では珍しい曲なのかもしれない。

 古今亭菊志ん『紙入れ』。間男の主導権を握っているおかみさんが、なかなか色っぽい。色目を使いながら「隣の部屋でゆっくりしようよう〜ん」と言いながら、羽織を脱ぐ。アハハ、絶妙なタイミングの羽織の脱ぎ方だね。

 伊藤夢葉のマジック。寄席のマジックは喋りで見せるのが第一と思っているが、この人くらい喋る人も珍しい。出てきてから終わるまでずーっと喋りっぱなしでマジックを続けていく。喋りで引き付け、どうでもいいようなコミカルな仕掛けを見せて笑いを取り、ときに「あっ」と言わせる鮮やかなマジックが挟まる。まさに観客はあっけにとられているうちに終わっている。もう真剣にトリックを見破ろうなんて気も起き無くなっちゃうんだよね。

 トリは古今亭駿菊。明日は衆議院議員選挙だとの前振りから、「寄席でもね、年に何回かお客さんにアンケート調査しているんですよ。出口で、今日一番面白かったのは誰ですかって丸を付けさせる。トリの人が一番人気があるかと思うと、これがマジックの前に出る人に人気が集まる傾向があるそうで。奇術(期日)前投票と言って」
 この日のネタはネタ出しがしてあった『おかめ団子』。滅多にかからない珍しいネタ。これといって笑えるところもないし、オチと言えるものもない。演じ手には難しい噺。まあ一種の親孝行ネタともいえる噺なのだが、駿菊はうまく噺を運んでいく。終わって記憶に残るのは、毎日団子を買って食べるのを楽しみにしている大根売りのたすけさん。風の強い日の裏木戸のバタンバタンという音。硬い布団に寝ている母。といった映像。明るい材料はほとんどラスト近くまでない。でもなぜか心に沁みてくる噺なんだなぁ、これが。

12月16日記

静かなお喋り 12月15日

静かなお喋り

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