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客席放浪記

鈴本演芸場正月二之席夜の部

2013年1月11日

 今年初めての落語であり、寄席。

 開口一番、前座さんは柳家花どん『道灌』。演じ分けが巧みになってきた。前座修行頑張ってね。

 柳家喬之進『仏馬』。去年ようやく柳家喬太郎で聴くことができた珍しい噺。弟弟子の喬之進も演ってるんだね。

 ダーク広和のマジック。今席初めてやるネタらしい。ロープでやるマジックを風船でやってみようという試み。でも「ちょっと地味でしたかね」と、後半は何もない空間から大判小判を次から次へとたくさん取り出すマジック。正月らしくて縁起がいいね。

 柳亭左龍『宮戸川』。「鼻が赤くて燕路師匠みたい」「違うんです。燕路師匠は発泡酒の飲み過ぎでーす」って、何のことやら。

 「昼日中にガード下で呑んでいると碌な事言われませんけどね、これが藪だとオツだねなんてことになる」と酒飲みらしいことをマクラに、柳家さん生『親子酒』
 この親父さんのアル中ぶりが可笑しい。おかみさんにお酒をねだるのに「今晩呑ませてくれたら、お前を抱いてやる」っていうのはいいね。呑んだら呑んだで「酒がお腹に入って、お前によろしくと言ってます」。いい感じで呑んでいるのはここまで。酔っぱらうと、茶碗に注いだ酒を飲んだことすら忘れてしまう。「(茶碗に酒が)入っとらん」が始まる。呑んでも呑んでも「入っとらん」。果ては「ババァ、酒持って来い!」

 漫才の、すず風にゃん子金魚の金魚ちゃんの髪には正月飾り。金魚ちゃんの自由奔放なボケに、ひとつひとつ受けに回るにゃん子ちゃんも忙しい。女のフェロモンに関する女性らしいネタで、おもに女性客に受けている感じ。「フェロモンって知ってる?」「体脂肪」「それは増えるもん」。

 林家彦いちがマクラで三遊亭白鳥について触れると、やけに反応がある。どうやら今夜のトリは喬太郎だし、そのあたりの落語家のことは知っているって客層が多いらしい。彦いちだって喬太郎や白鳥と一緒のSWAだったしね。反応がいいので白鳥逸話を二本。受けてる、受けてる。そのまま『睨み合い』へ。

 桃月庵白酒は、いつものように毒舌というより、仲間内や政治のことを茶化すマクラで笑いを取る。
 時間が押しているので早めに『だくだく』へ。部屋の壁いっぱいに貼った紙に家財道具などの絵を描いて貰う噺だが、「有名人の色紙も描いといて。柳家小三治の。死ぬと価値が出るから」。それが「つもり」のところになると、「○代目○○の色紙も包んだつもり」「格が下がってないか?」

 仲入り後は、柳家小菊の粋曲から。冬の都々逸がいいね。「なんの寒かろ ひとつの傘に 触れる手と手の 温かさ」だってさ。ウフッ。

 講談の宝井琴調がマクラで言った、新しい鳴かぬならホトトギス川柳が面白い。「鳴かぬなら 自分で鳴きます ホトトギス 猫八」「鳴かぬなら お取替えします ホトトギス ジャパネットたかた」
 『木村重成 堪忍袋』は、些細なことで恨みを持って暴力行為に出る事の愚かさを教えてくれる、ためになるお話。人間もっと大らかでなきゃね。正月早々勉強になりました。

 ホームランの漫才は、テレフォン・ショッピングのネタ。健康器具、健康食品、時計など。よく考えるとヘンな売り文句の商品あるよね。

 さあ、トリは柳家喬太郎。おっかなかったという先代古今亭志ん馬のエピソードをマクラに『小言幸兵衛』
 この噺、以前は単に笑って聴いていたのだが、自分が年を取ってくると、笑い事でなくなってきた。自分が世の中の事や人に文句ばっかり言ってる。もっとも幸兵衛のように口には出さないけれどね。
 この幸兵衛という人、何事にもキチンとしていないといられない。布巾を干すにしても、前後同じ長さにかけないと気に入らない。几帳面なんだけど、、それを口に出してしまうところが老人なんだろうなぁ。
 几帳面さが過ぎると、自分の思い通りにならないと、それが全て気に入らなくなる。終盤の妄想部分で、心中相手の名前が杢太左衛門というのが許せない。絵にならない宗旨が気に入らない。
 こうなると、妄想の中でもキチンとしないといけないという、こだわりが邪魔をするわけだ。
 今の世の中、ヘンにこだわりなんて言葉がもてはやされているけれど、こだわりはいいけど、ほどほどにってことなんだよな。
 あっ、また私、小言みたいなこと言ってないかな?

1月12日記

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