鈴本演芸場九月上席夜の部 2013年9月3日 特別企画公演 ほほえみ残暑見舞い 白酒の裏切り 〜おはよう新作、おやすみ古典〜 18時から途中入場。 春風亭一之輔の故郷は千葉県の野田。その野田を昨日、竜巻が襲った。幸い一之輔の実家は何事もなかったようで、そんな事をマクラにして『かぼちゃ屋』。「上を見て売れ」と言われた与太郎、空を見上げて「竜巻を止めろ!」 「ついこの間マッカーサーが来たと思ったら、今日は9月3日」 柳家権太楼が、2005年に亡くなった桂文朝のお株を奪ってる。そうか、文朝が亡くなってもう8年。マッカーサーどまでいかなくても、月日の経つのは早いなぁ。ネタは『蜘蛛駕籠』。権太楼版には稲荷寿司のくだりが出てくる。この部分、他の人ではあまり聴いた事ないな。これが汚いんだけど可笑しい。 ロケット団の漫才。「ルート2の憶え方は、ひとよひとよにひとみごろ」「それ、どういう意味なの? 全然わからない」「意味なんかないさ。それじゃあ、ルート3、ひとなみにおごれや。これなら意味わかるだろ」「なにその上から目線」「それじゃあルート5。富士山麓に鸚鵡鳴く」「ああ、富士山、上九一色村、オウム真理教ね」 柳家三三は、おめでたい噺をということで、お客を取り込む泥棒の噺ということで『出来心』。でも、これって、白酒が新作落語をやるっていうんで、出来心とも取れるんだけど。 三遊亭白鳥は、寄席でかけるのは初めてだという『豆腐屋ジョニー』。なんでも『ゴッドファーザー』のような噺を作りたかったそうで、スーパーの冷蔵庫棚の縄張り争いを、チーズ・ファミリーと豆腐一家が繰り広げるという噺。それにスーパー側の思惑である、真夏のあったかメニュー戦略が絡み、マロニーをどちらが取り込むか、そしてチーズ・ファミリーの娘マーガレットと、豆腐屋一家のジョニーの許されない愛はどうなるのかって、すんごい噺だねー。 仲入り後のクイツキは、アサダ二世のマジック。風船の中から、お客さんの引いたトランプを出す手品。これはおもちゃの鉄砲を使うのだが、あらあら忘れてきたそうで、「暑さのせいでね」 蜃気楼龍玉は『一眼国』。見世物小屋の主人が旅の六部になにか珍しいものを見なかったか尋ねる。「なぞかけのできない噺家とか」 それはいそうだなぁ。 林家正楽の紙切り。お客さんからのお題は『虫の音』『あまちゃん』『縁台将棋』。草むらに屈みこんだ女性に、葉の上の虫。細かいところまで切るもんだなぁ。 さあて今日の目玉はこれ。桃月庵白酒が新作落語でトリを取る。マクラで白酒が語るところによると、この企画は、今年の鈴本二の席(一月中席)のウチアゲでの事。白酒が前座時代に新作をやっていたことがあるという話で盛り上がって、席亭が、「それなら今度、トリで新作落語をやろう」と言い出して、仲トリは喬太郎でという話にまでなって、そのときは酒の上での話だったのが、七月に突然九月上席に決まったからと席亭から連絡があって、なぜか仲トリ喬太郎の部分だけはスッポリ無くなってしまって動き出してしまったというもの。 二日ずつネタを変えるということで、今日は『メルヘンもう半分』。これは白鳥が古典の『もう半分』を改作したものを、さらに白酒が作り変えたらしい。白鳥版は『もう半分』を『ムーミン』の登場人物で演ったが、白酒は『ドラえもん』。のび太くんとしずかちゃんが、落語世界に逃げ出して夫婦になっって、千住の橋のたもとで居酒屋をやっている。そこへドラえもんがやってきて、元の二次元のまんが世界に一緒に帰ってくれと頼む。まんが『ドラえもん』は、あくまで、のび太とドラえもんが一緒でないと成立しない。つまり、もう半分がいないと作品にならないというわけ。怪談『もう半分』の怖さと、ドラえもんのキャラクターのバカバカしさが一緒くたになった面白さ。いやいや、これは堪能しましたね。 9月4日記 静かなお喋り 9月3日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |