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客席放浪記

鈴本演芸場五月中席昼の部

2014年5月20日

 割引料金で仲入りから入場。喬太郎がトリということもあるのか、平日昼間だというのに、ほぼ満席。なんとか空席をひとつ見つけ席に着く。

 笑組の漫才。「飛鳥が麻薬所持容疑で逮捕されまして。合成麻薬MDMA、一錠5000円だそうなんですが、それを90錠持っていたとか。90錠ですよ。一錠5000円ですから、全部でいくらかと言うと・・・ ・・・ ・・・まあ、たいへんな金額なわけで。そこいきますと寄席の世界はクリーンですから誰も麻薬に手を出したりしません。そんなお金持ってる人は誰もいません」
 これで喜ぶのは、東京ボーイズ。「麻薬で捕まっちゃった人の曲」リストが、これでまた増えた。

 桂藤兵衛『怪談・虎の子』。これを聴くのは初めて。「虎の子の金返せ」と言って出てくる幽霊。井戸の脇の松の木の下に埋まっているというので掘ってみると・・・。唖然とする展開に笑いが起こる。これが落語。15分の持ち時間で、こういう噺っていいよなあ。

 柳家喬之助『短命』
 「その当座 昼も箪笥の環が鳴り と言うだろ」
 「地震ですか?」
 「何よりも そばが毒だと 医者がいい とも言うな」
 「そばがいけないんですか。ああ、タンメンね。短命だからタンメン」

 ストレート松浦のジャグリング。中国独楽、バトン、コップ、踊る棒。太神楽とはまた違った曲芸が寄席で観られるのはいいね。

 柳家喬太郎はマクラも無く、スッと『井戸の茶碗』に入った。真っ直ぐな性格の人物しか出てこない噺なのだが、喬太郎にかかるとやはりいじりたくなるものらしい。屑屋さんは「(自分の欲望に)正直清兵衛」になってしまう。仏像から出てきた金を持ち主に返してきてくれと言われれば、しらばっくれちゃいなさいよとそそのかす。行ったり来たりでひどい目にあったあと、今度は茶碗が三百両で殿様が買ったからと言って半額戻しに行ってくれと言われて、嫌な顔をする。あたり前っちゃあたり前。自分の気持ちに正直な反応をしてしまうってのも人間らしい。なにしろこの噺、一番割りを食うのは屑屋さんだ。侍なんていい気なもんだよなってこと。娘を嫁にもらってくれというラストでは、「いい御妻女になりますよ。短命になりますがね」と、いたずらを口にする。これは前に出た喬之助の『短命』を拾ってあげての事。屑屋さんだけでなく喬太郎のいたずら心でもあるんだね。

5月21日記

静かなお喋り 5月20日

静かなお喋り

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