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客席放浪記

鈴本演芸場六月中席夜の部

2014年6月17日

 三遊亭白鳥が十日間連続で三題噺に挑戦するということをやっていて、今夜はその七日目。お題を貰ってから80分後に一席の落語にして高座に乗せるという離れ業のようなことをする企画。こんなことやった人、今までいなかったろう。

 開口一番前座さんは、三遊亭ふう丈『桃太郎』。前座修業頑張ってね。

 ダーク広和の、地味でわかりにくいロープマジック(笑)。マジック好きのマニアは喜びそうだけれど、いきなりやられると、地味すぎて、なんだかよくわからない。マニアの集会か? まあ、今日のお客さんたちのほとんどは、白鳥の三題噺が聴きたくて集まって来た人たちだから、マニアックな人たちか。

 四年五ヶ月の前座修業を終え、二ツ目に昇進したばかりの古今亭始。うれしさが高座に溢れている。落語家になる前は介護福祉士をやっていたそうで、楽屋仕事を始めてみれば、大先輩の身の回りの面倒をみることが主な仕事で、介護の仕事とあまり変わりなかったってマクラも、マクラを話せること自体が実に楽しそうだ。『浮世床』の本の部分だけをサッとやって時間切れ。

 そんな始の様子を見て上がってきた春風亭一之輔。「ウキウキしているのが伝わってきますな。南北戦争で解放された奴隷みたいなもので。これから先、二ツ目になってしばらくすると、今度は現実が待っているんですけどね〜」。何を演るのかと思ったら、昨日もにぎわい座でやっていた『新聞記事』。寄席バージョンらしくて、いくらか短め。それでも面白い。今まで聴いた誰の『新聞記事』より面白い。

 トリの三遊亭白鳥の三題噺のお題を決める。まずツイッターで募集したものをひとつ。そのあと客席のお客さんから募集した九つのお題を書きだし、そこから抽選。決まったのは、「シングルマザー」「夕立」「神隠し」

 粋曲の柳家小菊が『欣来節(きんらいぶし)』を聴かせてくれる。「中で、オッペケペッポーのキンライライって歌詞があるんですよ。先生に、『これってどういう意味なんですか?』って訊いたら、『オレの知らない事訊くんじゃねえ』って。だからいまだに知らないんです」

 柳亭市馬『山号寺号』だ。「ピザ屋がありますね。パルメザンチーズ味」「おっ、さくら水産ソーセージ」「清子さん水前寺」「太郎さん東海林・・・(『国境の町』の一節を歌って)・・・市馬さんオンステージ」「噺家さん小三治」「白鳥さんいい感じ・・・または、白鳥さん問題児」「一之輔さん新聞記事・・・前を聴いてないとわからない」「百栄さんエロおやじ」

 その春風亭百栄が出てきて「エロおやじです」。白鳥が三題噺をやるということを持ち上げて、「でも当たり外れが多いですよ。実際ハズレが多い」なんて言いながら、うまくお客さんを誘導して『ジャム浜』

 仲入り後、和楽社中。今日は和楽は欠席で、小楽、小花、和助。

 橘家文左衛門『時そば』。「この看板、クルマがあって、横に人が倒れてるね。ああ、それで当たり屋」「甘いのしょっぱいのってのはあるけど、この汁、渋くて苦いって、農薬入ってるんじゃないの?」 凄いね。

 ロケット団の漫才は、サッカーの話題が盛り上がって来るとやっている、オフサイドルール漫才。結局、説明しないんだけどね。

 さあ、トリの三遊亭白鳥。80分が経過して高座に上がる。見事30分弱ほどの噺として作り上げた噺は、私が聴きとった感じだと下のようなもの。

 夫の浮気が原因で離婚したおかあさんは、ひとりで食堂を切り盛りし、小学生の男の子、たかし君と一緒に暮らしています。学校から帰ってくると店の手伝いをさせられるたかし君は遊び盛り。店の手伝いをさせられるのに不満そう。今度の土曜日は学校の運動会。ほかの子供はおかあさんと一緒にお弁当を食べるのに、たかし君のおかあさんは土曜日も仕事で、毎年来られません。一応試しに「運動会で、おかあさんと一緒にお弁当を食べたいな」と言ってみますが、やっぱり「土曜は仕事だよ」と相手にしてくれません。そんなとき、店の常連客がおかあさんに「映画の招待券を貰ったから、今度の土曜日に一緒に行かないか?」と誘っているのを聞いてしまいます。おかあさんは「あら、いいわね」と答えますが、これは仕事上の社交辞令。まったく行く気はありません。しかし誤解した、たかし君は家を飛び出してしまいます。裏山の神社の前まで来たときに、突然夕立が降ってきます。慌てて神社に飛び込むたかし君。そこには髪の長い男がいました。一瞬、たかし君はこの人物が神様かと思いましたが、実は単なるホームレス。たかし君は、この神社でホームレスの男と二日間一緒に生活します。食事はそこらに生えている雑草。電気は無く、もちろんテレビもありません。布団も段ボール。男はたかし君に言います。「こうして暮らしてみてわかったろ。普通の生活をするためには一生懸命働いて、お金を稼がなければならないということが」。このホームレスは公金を横領して逃げ回っていた男でした。たかし君は家に戻る決心をします。家に帰ってみると、たかし君が行方不明になったということで、大騒ぎになっています。警察まで出動していました。しかし、たかし君はホームレスと一緒に暮らしていたことは漏らしませんでした。ホームレスのことを話せば、きっと逮捕されてしまうに違いない。たかし君は、自分で自分が神隠しにあったと主張します。やがて土曜日がやってきます。運動会に参加してひとり寂しくコンビニのアンパンを食べていたたかし君の前に、お弁当を持ったおかあさんが立っていました。

 これだけの児童文学の一冊のような噺を80分で考え出して、一席の落語に仕立て上げる。もちろんギャグを散りばめ、サゲも用意する。こんな離れ業ができるのは、今、この人に敵う人はいないんじゃないかと思う。

 鈴本の玄関に置かれた今日の白鳥の雲目は『たかし君の神隠し(仮)』。これは、もう少し細部を詰めて、スッキリさせれば、ちゃんとした持ちネタになりそうな気がする。

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