鈴本演芸場初席・第3部 2015年1月9日 初席とあって、トリ以外はみんな持ち時間10分。それでも浅草演芸ホールよりは持ち時間があるらしい。でも10分ですむ落語って、ほとんどない。出る人出る人、サゲまで行かずに途中で切って終わる、いわゆる冗談オチ。あるいは小噺か漫談。まあ正月早々、根詰めて落語聴かなくたっていいやね。 三増紋之助の曲独楽。いつもより運びが早い。はぁ〜、10分でもできるんだ。でもちょっと慌ただしいかな。 「また今年も餅を喉に詰まらせたご老人がいたそうで、歳取ると飲み込む力が弱くなるから餅は小さく切って食べてね。それと雑煮ならいいけれど、水分の無い餅は要注意。きなこ餅なんて一番危険だよ」。林家しん平は正月の漫談をやって、「今日はここで初詣が出来るように、携帯初詣セットを持参しました」と、なにやら狛犬の被り物をしてお祓い。お客さんは柏手二拍。私の今年の初詣はしん平神社になってしまった。 ロケット団の漫才も10分バージョン。それでもいつもの四字熟語やら山形弁ネタはちゃんと入れて、さらに時事ネタも入れてる。「アジア大会、日本はメダル、いくつ取ったと思います? 金銀銅合わせて200個。金メダルだけでも47個ですよ。それにカメラ1個」 春風亭百栄は、いつものマクラのようなもののあと、これもたまに聞く交通違反した夫婦の小噺。 春風亭一之輔の『桃太郎』は、ちゃんとサゲまで行ったけれど、凄い早口の『桃太郎』だなぁ。子供が父親に早口で喋るから、余計にきつい口調になる。これは面白いや。 マギー隆司のマジック。正月らしく松竹梅三種類のカードを使ったマジックだけど、なんとなく誤魔化されたような感じがするぞ〜。アハハハハ。マジックは10分だろうが15分だろうが、あまり関係ないね。 五街道雲助はマクラもなくスッと『ざる屋』へ。なるほど、後半の縁起の悪い部分をカットした『ざる屋』は、マクラ無しなら10分で収まるんだ。 柳亭燕路の『黄金の大黒』は羽織を着た一番手が大家さんに挨拶する所まで。まあここまでがこの噺の一番面白いところだし、ここで切ってもおかしくは無いんだよな。 ペペ桜井のギター漫談も同じ。いつもいくつかのネタをとっかえひっかえ入れ替えての15分。それを10分だけにすればいいんだものね。 柳家権太楼は『代書屋』。これもどこででも切れる。もっともこの噺って元々は長いらしい。後半部分って聴いたことが無いや。 仲入り後は、太神楽社中の獅子舞から。今は正月に寄席に行かないと獅子舞が見られなくなってしまった。以前は下町では正月になると一軒一軒、獅子舞が回ってきたものだったなぁ。 「正月が冬の真ん中にあるというのがいいですね。これがね、7月31日が大晦日、8月1日が元旦だとしますとね、朝起きた途端『正月、やだねぇ〜』」。今回、初席に行こうと思ったのは、柳家小三治が出るから。それもトリではなくて途中に出番が入っている。普段、小三治はトリの位置以外で観られることは、なかなか無い。初席の10分の持ち時間だとすると、やるのはアレだろうと予想したとおりだった。『小言念仏』。やはり絶品ですな。 「私の出番、イジメだと思いません? 人間国宝と落語協会会長の間ですよ!」と柳家喬太郎。自作の『ほんとうのこというと』で爆笑を取る。やはりお客さんは喬太郎に新作を求めているんだな。 柳亭市馬は『三十石』。、船頭歌のところまで。というより、この船頭歌を聴かせるのが目的だな、こりゃ。ハハハハハ。 林家正楽の紙切り。いつも鋏試しは、『相合傘』と決まっているのだが、正月とあってか『羽根つき』。お客さんから「羊千匹」という声が飛ぶが、「聞こえなかったお題もあります」と、もうひとつのきれいなお題『ふくら雀』。寒くてコロッコロッに丸く膨らんだ雀のことをこう言う。切り終わって、「さて、羊千匹。一匹は切りますが、さて千匹の方はどうしよう」としばらく迷っていたが、「そうだ、そうしましょう」と切り始めた。出来上がったものは、立ち上がった羊が棒で地面に線引きをしているというもの。うまい! トリは柳家三三。『火事息子』をたっぷりと。最後にキリリと締めた。寒い夜にこの噺。勘当した息子を思う親子心が伝わってきて、ちょっぴり気持ちも暖かくなった。 1月10日記 静かなお喋り 1月9日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |