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客席放浪記

鈴本演芸場五月中席夜の部

2016年5月17日

 あまり客の入りがいいとは言えない日。それでも前の方の席は中高年の女性の団体が入っている。この人たちが実によく、いい感じに笑うので、雰囲気良くあったまっている。こういうのって、のんびりと楽しい寄席気分になっていいんだよねぇ。

 開口一番前座さんは柳亭市朗『子ほめ』。前座修業頑張ってね。

 マクラで、今年亡くなった江戸家猫八のことを話してくれたが柳亭市江。「私、この世界に入る前に一度、猫八先生を見たことがあるんですよ。キオスクでアルバイトしてたんですが、猫八先生がいらして競馬新聞買っていらした。猫が馬を買って行った」。噺は『しの字嫌い』

 翁家社中の太神楽。小楽和助のコンビ。

 五明楼玉の輔は、お得意の『宗論』。「肉が固くて食べられないと言った男に、わか主イエスは申されました、くい改めよと」。アハハハハ。

 古今亭菊之丞『蛇含草』。この噺、リアルにクドくやられると気持ち悪くなってしまうので苦手なのだが、菊之丞はサラッと演ってのけた。これなら胃もたれしないや。

 林家正楽の紙切り。客席からのお題は、「鏡獅子」「芝桜」「お相撲さん」。お客さんの数が少なかったので、私も一声「クマモン」と言ったら、切ってくれた。「私にクマモンが切れるかな? 似てなかったらごめんなさい」と言って短時間で切ってくれた。実物は『静かなお喋り』の方に載せました。なにも見ないで記憶だけで切ったにしては上手いでしょ。

 和服で帯を締めて正座すると、太っている人は帯が腹の肉に埋もれてしまって見えない。古今亭志ん陽もお腹廻りに脂肪がたっぷり。「安心してください。締めてますよ」。噺は『たらちね』

 ほんわかした、いい客席の雰囲気のせいか、強持てキャラが売りの橘家文左衛門も、今日はなぜかいつもの感じではない。とても優しい声と顔で客席に話しかけている。マクラで、生きた白魚の踊り食いをして、ひどい目に遭ったという話をしてくれた。それが可笑しいのだけど、なぜか今日は文左衛門が可愛く見えた。噺は『寄合酒』

 ホームランの漫才。「12kgの覚醒剤を拾った人がいるんですってよ。覚醒剤12kgって、末端価格でいくらくらいになるかご存知ですか? 72億円ですって。警察に届けて誰も持ち主が現れなかったら、その覚醒剤、拾った人が貰えるんですかね?」。ウハハハハ。

 宝井琴柳の講談は『清水の小政』。神田派の『清水次郎長伝 小政の生い立ち』と同じだね。

 柳家小菊の粋曲。『キンライ節』、都々逸のあとは、東京の祭の時期ということで、祭の歌。

 トリは柳家小せん。今日は何かな〜と思ったら、『井戸の茶碗』。いどちゃかぁ〜、最近寄席は誰がトリでも、いどちゃだよなぁと、少々食傷気味の私。でも小せんの『井戸の茶碗』、丁寧な運びでい感じ。40分くらいあったが退屈しなかった。声がいいのと。メリハリがあるからだろうね。

 とてもいい雰囲気で聴けた夜だった。切ってもらったクマモンを見ていると、とても和んだ気分になれる。今日の寄席そのもの。

5月18日記

静かなお喋り 5月17日

静かなお喋り

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