鈴本演芸場八月上席夜の部 2017年8月9日 開口一番前座さんは、橘家かな文で『一目上がり』。前座修行頑張ってね。 翁家社中の太神楽。今日は和助が休みで、小楽と小花。これは新鮮。今度は和助、小花コンビだったらどうなるのか観てみたい。 柳家喬之助は『真田小僧』。「ここから先はもう二銭だよ」 「さっきは一銭だったじゃねえか」 「一目っつ上がるのが寄席のルール」。 三題噺のお題とリ。十個出たところで抽選。選ばれたのは「海亀」、「卒業」、「芥川賞」。 古今亭菊太楼は上がるや、「喬太郎さんね、楽屋に戻って来るやもう顔が創作モードに入ってましたよ」と一言。これから二時間後には、このお題で高座に上がる。しかも30〜40分の落語に仕立ててみせようというのだから凄い。菊太楼は『長短』。 のだゆき。ピアニカのデコ弾きは、お題の「海亀」を意識したのか、童謡唱歌『海(海は広いな大きいな)』。頭と尻尾だけ。基本、デコ弾きは黒鍵を使う。黒鍵だけで賄えない曲は弾けない。おそらく試してみて中間部分は無理との判断、中抜きにしたのだと思う。 入船亭扇辰は『田能久』。うわばみが「お前の怖いものは何だ? 饅頭なんていうのはダメだぞ」。落語好きだけど、やはりバカなうわばみさん。騙されちゃう。 仲トリは日替わりで、今日は柳家さん喬の日。恒例の季節のマクラで、暑いけれど秋の気配も感じると発言して、こう暑くちゃわかってもらえないだろうなと結ぶ。で、始めたのは『幾代餅』。『紺屋高尾』とほぼ同じ噺だが、年季が開け餅菓子屋の女房になるこちらの噺の方が庶民的かな。 仲入り後のクイツキはホンキートンクの漫才。なんだかいつもネタが同じだなと思っていたコンビだが、さすがにこの興業はリピーターが多いせいか、聞いたことがないネタが多かった。それだけではなく、いつものツカミの血液型と星座の部分。星座を干支に変えるという新しい手できた。な〜んだ、いろいろ小回りができるんじゃないか。 柳家はん治は『ぼやき居酒屋』。桂文枝作の噺をかけ続けている人だが、この人にははん治調ともいえる独特の話し方があって、不思議とどの噺もはん治ワールドに取り込んで面白い噺になる。この『ぼやき居酒屋』も同様。 林家二楽の紙切り。切りながら話したのは、先日の『二楽劇場』でも話していた家族の話。お題は、「富士山」、「海水浴」、「桑田佳祐」。「喬太郎に考える時間を増やすためにいつもよりゆっくり切ります」と言いながら持ち時間がなくなってきて、最後の「海水浴」では浜辺で「桑田佳祐」が歌っているところを切って終了。 柳家喬太郎三題噺。海亀、卒業、芥川賞。 ユミコは子供の頃、両親に連れられて小笠原へ旅行に行く。そこで真夜中に海のなかから亀に乗った少年が陸に上がってくるのを目撃する。 歳月がたち、ユミコは大学生。文学青年の彼氏と小笠原を訪れる。卒業を前にしたふたりだが、ユミコは小笠原が気に入ってしまい、ここで暮らすと言い出す。 東京に帰った彼氏は小説家になる夢はあるものの、普通に会社に就職。遠距離恋愛のユミコに会いたい気持ちはあるが仕事が忙しく有休も取れない。来年三月まで待ってくれ(さん喬の『幾代餅』)と言っている。 三月になり小笠原へ行ってみると、ユミコは島の青年とデキてしまっている。その青年こそ、子供時代に出遭った亀に乗った少年。ふたりは亀に乗って海に消えていく。 彼氏はいつ日か作家になっていて、ユミコの話をもとに小説を書き芥川賞を受賞する。 これが大まかなストーリーだが、細かい入れ事がたくさんあって、よくまあ二時間程度でこれだけの噺を作りあげて演じたものだと思う。 終演観゛、この噺のタイトルは『海亀の島』と発表された。 8月11日記 静かなお喋り 8月9日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |