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客席放浪記

鈴本演芸場八月中席夜の部

2017年8月20日

 夏の寄席の風物詩はいろいろあれど、やはりこの番組、「さん喬、権太楼特選集」は行かなきゃね。

 柳家小傳次『仏馬』。喬太郎が掘り起こして来た噺。小傳次は二ツ目喬之進のころから、すぐに受け継いで演っている。もうすっかり得意ネタだね。

 鏡味仙三郎社中の太神楽。傘回し、五階茶碗、土瓶、花笠交換取り。この社中は、いつも流れるように鮮やかに曲芸をこなし去って行く。

 柳亭左龍『長短』。長吉さんがじれったいくらいのんびり喋る型。短七が長吉に、饅頭を食うかどうか聞いている。「どうなんだ、食うのか食わねえのか!」。そんなこと聞かなきゃいいのに。

 橘家文蔵『寄合酒』は鰹節、味噌のあと、鰹節で出汁を取るくだりを割愛。鯛を盗んだ犬を殺して両方ともツマミとして持ってきた。文蔵らしい、この乱暴さが可笑しい。

 柳亭市馬が、きれいに『雑俳』を聴かせてくれた。ブツブツ切れる笑いになりがちなこの噺を流れるように喋る。
 「ご隠居さん、このご時世、いいもの食べて、いい服着て、働かない」とあらぬ疑いをかけられる。私も今や同じ隠居の身になっちゃった。いい服は着てないけどね。もっぱらユニクロ。俳句は作らないけど、ブログタイトルは毎日五七五。

 ギター漫談のペペ桜井が、ほとんどの曲は四小節単位で作られているのに、『さくらさくら』は、二小節のところがあると不思議がってる。ほんと神秘的な歌。

 柳家喬太郎が、自作の『同棲したい』を始めてしばらくしたところで、
 「かあさん、私と別れてくれ」
 「・・・後悔しない?」
 「実は後悔してる。新作とはいえ、今日はウチの師匠、『子別れ』をネタ出ししてるんだよな〜」夫婦が別れるというところが、被ってしまっている。「いいや、オレが師匠に怒られればいいんだ」。
 場内、大爆笑。

 露の新治が喬太郎の噺を受けて、「物事、形から入る人がいまして」と、聖飢魔Uのコンサート帰りの、電車に乗って来た一団が、みんな派手なコスチュームに化粧をしていて、それが駅に停まるごとに少しずつ下りて行って、最後に残った一人がバツが悪そうにしていたというマクラでまた爆笑を取る。
 そこから『七段目』。上方のは、はめものも入ってにぎやか。

 仲入り後、伊藤夢葉のマジックがクイツキ。
 カード当ては、手先だけのトリックだろうな。鮮やか。

 「出囃子、変えようかと思うんですよ」と柳家権太楼。噺家の葬式で、出棺の時に出囃子を鳴らすことがあるらしい。゜私のは『こんびらふねふね』。陽気すぎる。そこへ行くと小三治はいい。二上がりかっこ。ただなかなか霊柩車まで来ない。マクラが長くて『小言念仏』」。
 ネタ出ししていた『短命』。炬燵のなかで足と足が触れてというところで、ようやく気が付いた男が、「ああ、足って先っぽだけでなく脚。それであんなことやこんなことも」と手真似を持ち出すと、ご隠居さん、「手は浅草演芸ホールでしなさい」。
 林家正楽の紙切り。鋏試しをいつもの「相合傘」ではなく「線香花火」にしたら、一番前のお客さんが「相合傘」・・・って、そういうの普段の日最前列に座って、鋏試しのものを貰ってほしいな。あとひとつは「バンダ」。

 権太楼が楽屋袖の戸を自分で後ろ手に閉めて、まっすぐ前を見ながら高座に上がるのに対して、柳家さん喬は、戸は前座さんに任せて、うつむいてスタスタと高座に上がる。
 喬太郎のネタが自分のネタ出しをしてある『子別れ』と被ったことに文句を口にするものの、あまり怒ってない感じがする。いい師弟関係だな〜。
 葬式帰りに吉原に行ってなかなか帰ってこなかった亭主が、高飛車な態度で帰ってくるところから入り、45分。
 亀むちゃん、父親から貰った五十銭を右手に握りしめて帰宅し、すぐさま母親に糸をほぐす手伝いをさせられて、洟を吹くように言われた拍子にお金を床に落としてしまうという演出は上手い。この亀ちゃんが両手を広げて糸をほぐしやすいように送る所作がうまくできないと成立しない。さすがにさん喬、上手いね。

8月21日記

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