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客席放浪記

鈴本演芸場十二月中席夜の部

2017年12月15日

 開口一番の前座さんは春風亭きいち。一之輔の弟子だね。『金明竹』。前座とは思えない素晴らしいできの『金明竹』。キャラがひとりひとり立っているし、こんな聴き飽きたような噺でもちゃんと笑いを取る。面白い人が出てきた。ほんと、最近の前座さんは上手い人が多い。前座修行頑張ってね。


 柳家花ん謝『権助提灯』。旦那が、おかみさんからもお妾さんからも疎まれているらしいのが可笑しい。最後にはおかみさんから「このハゲー!」

 翁家社中の太神楽。和助の土瓶は本当に見事な芸になって来た。

 ここで文菊、志ん陽の交互出演だが、二人ともほかにいい仕事があってか休演で、代演には古今亭菊太楼『一目上がり』

 三遊亭白鳥は、おバカな看護師の噺『ナースコール』。先日は点滴事件で死にそうになったのを看護師さんに助けられたそうだというのに。

 春風亭一朝『壺算』。「一荷の甕じゃなくて二荷の甕なら、ハナからちゃんとそう言え!」と瀬戸物屋の前でアニキに怒鳴られて不満そうな男。何も聞かされてないと驚くやね。

 柳家小菊の粋曲。『春雨』の替え歌で『年中行事』を聴かせてくれた。今年は小春が『春雨』の替え歌でチャプチェの作り方を歌にしてくれたが、替え歌が作りやすい歌なんだろうか?

 年末ということで宝井琴調による忠臣蔵がらみの講談が仲トリ。今日は落語でも『淀五郎』として演られている『団蔵と淀五郎』。最後に淀五郎のすぐ傍にやってきた団蔵が「仲蔵に教わったな」と淀五郎に耳打ちするというのは可笑しくていいなぁ。

 仲入り後クイツキがホンキートンクの漫才。今日もマッチとトシちゃんのネタが〆。音楽ものは受けがいいのだろう。

 三遊亭歌奴『初天神』。「おとうさん、お団子屋さんは偉いね。毎日働いてて。少しでも売り上げに貢献してあげたいから、お団子買って!」

 林家正楽の紙切り。お題は「忠臣蔵」、「正楽」、「琴調」。

 トリは隅田川馬石。若いころのしくじった記憶を思い出すと、なんであんなことやつてしまったんだろうと嫌になって来るという若さゆえの失敗談を話してから『芝浜』に入る。
 これは師匠の雲助に教わった噺なんだろうか? 最後の三年後の大晦日の時点で魚勝はまだ店を持っていない。なるほどそうだろう。三年で信用を取り戻して大きな店を持って使用人まで雇っているなんて、よく考えればありえないものな。お上から戻って来た四十二両で店を作る。こちらの方が自然だ。
 おかみさんが真実を打ち明けると、魚勝が一度怒りだす演出をする人がいるが、馬石は人間は過ちを重ねて成長していくものだと悟ったのだろう。おかみさんのすべてをすぐさま許し、礼を言う。
 魚勝は、しくじりを経て、人間的にも成長していったんだろうな。

12月16日記

静かなお喋り 12月15日

静かなお喋り

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