直線上に配置

客席放浪記

立川談志一周忌特別公演 立川流追善落語会 初日

2012年11月21日
よみうりホール

 今日11月21日は立川談志の命日で、去年発表があった23日までの三日間四公演の初日にあたる。一階席最後部には、放送局のテレビカメラがズラリと並んでいる。死後一年、まだニュースになるということなのだろう。

 客層は、やはり年齢層が高い。

 まずは口上。ズラリと並んでいる談志一門。すごい数だと思ったが、これでも孫弟子は今回含まれず談志の直弟子だけという布陣なんだそうだ。左談次以外は全員黒紋付き。土橋亭里う馬から、ひとりひとり紹介がある。立川流は積極的に観てこなかったこともあり、ほとんどの人の噺を聴いたことが無い。仕事の関係だろうか、談春の姿が無いのが寂しい。

 二ツ目泉水亭錦魚。会の初めということからか、“化ける”狸の噺『権兵衛狸』。もっともそんなに縁起を担がなくても全公演完売なのだが。

 選挙が大好きだった談志。入門した途端に選挙カーのアナウンスをやらされたという経験を可笑しくマクラで語った立川志の輔。それも落語の芸の基礎になった経験だったのかもしれない。談志十八番からということで『三方一両損』。サゲの部分が大きく変えてあった。当事者同士が一両損するというのは解るが、なにも関係のない奉行が一両損するというのが解らないというのが、いかにも談志の弟子といったところ。きれいにサゲを変えてきた。これが師匠への答えなんだろう。

 「師匠はスポーツが大好きでした。どちらかというと見る方でしたが。野球も自分が4番でピッチャーでないとやらなかった。一度もホームランもヒットも撃たれたことが無かった。打者全員デッドボールですから」。立川左談次は、相撲も好きだった師匠ということで『阿武松』

 仲入り後は、談志の娘と息子、それに立川志らくの鼎談。談志の遺骨を海に散いたときの裏話から、病気療養中の談志の事など。娘さんの松岡弓子は初めて見た。談志の看病日記を読んだ印象とはかなり違っていた。故人の遺族に話を聞くというのも悪くないが、こういうのはこれで勘弁して欲しいというのが私の正直な感想。談志のプライベートな面はもう結構だという気がする。落語家はあくまで落語家として評価されればいいのであって、その人が家族との間でどうだったというのは、どうでもいいような気がするから。

 ミッキー亭カーチスの漫談。アメリカン・ジョーク集。色物的に出てきたのだろうが、こういうのは私はどうかと思うのだがなあ。アメリカン・ジョークって、あまり話芸は関係ないようなところがある。それにハーモニカを吹いたが、それもプロとしてはあまり褒められたレベルでもないでしょ。それなら、いっそのこと歌でも歌ってほしかった。

 トリは土橋亭里う馬『富久』。考えてみればこの惣領弟子の噺を初めて聴いたことになる。どちらかというと談志っぽくない語り口で、より落語の自然なリズムで話している。談志の落語というのは、どこか談志が登場人物として喋った台詞が談志自身にフィードバックするような間があったのだが、そういうところは無い、と思っていると、ここはいかにも談志っていう瞬間があったりして、確実に談志を自分のものとして取り込んでいるようなところがある。
 そういうところからも、里う馬が立川流新代表というのは、いい選択だったのではないかと思えてくる。

 望むらくは、立川流が一日も早く談志から離れて、独自の道を進んで行ってほしい。師匠の死後をそんなに引きずっている落語家は、余所ではいないわけだし、芸は一代でしょ。談志の映像を興行的に見せるみたいな企画ももういい加減なところで止めにしてほしい。これではなんだか某国民的女性歌手を死後も担ぎ出している遺族みたいではないか。そろそろ静かに眠らせてやろうよ。

11月24日記

静かなお喋り 11月21日

静かなお喋り

このコーナーの表紙に戻る

トップ アイコンふりだしに戻る
直線上に配置