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客席放浪記

てんぷくトリオのコント

2014年7月6日
あうるすぽっと

 てっきり、井上ひさしがてんぷくトリオのために書いたコントを、ズラーッと並べるだけの企画だと思っていた。それが、観に行ってみたら、ちょっと思っていたものと違っていた。チラシをよく見たら、コント・井上ひさし、脚本 監修・ラサール石井になっていた。内容は、井上ひさし役の山西惇と、井上ひさしの娘役の佐藤真弓を狂言回しのように使い、井上ひさしの放送作家としてのデビューから、コント作家、劇作家、小説家になっていった経緯を語り、そこに、てんぷくトリオのコントを散りばめるという構成。コントは全部で十数本といったところか。それを我が家チームと、市川しんぺー、みのすけ、伽代子チームの二手に分けることで、着替えなどの時間ロスを省く構成。これがうまく作用している。

 コントはねぇ、なにしろもう半世紀くらい前のものじゃないですか。そのまま演ってもおそらく面白くないんだと思う。かなり筆が入っているなという印象。それでも古いやな、これはもう。頭張り飛ばしギャグとか、「いいかげんにしろ」オチは、もう今となっては通用しない感じ。『シャボン玉ホリデー』の時代、あるいは吉本とか松竹新喜劇ならともかく、今のスマートな笑いと違って、どこかくどくて、泥臭い。それを脚本段階で調整したラサール石井と、うまく現代的にテンポよく演じてみせた二組の勝利って感じがする。

 てんぷくトリオって、こんなにスピーディでテンポがよかったわけではなく、その持ち味は、もっとクダグダだった。まぁ、これはあくまで、井上ひさしが書いたコント世界だから、それでいいのだが、てんぷくトリオがこうだったと思われると、「ちがうんだよなー」というのが、私の感想。そのてんぷくトリオも伊東四朗以外はもうこの世に無く、井上ひさしも死んでしまった。

 この芝居、またこまつ座で続けていくのだろうか? コントとか笑いというのは時代と共に面白さが変化していく。次の世代の人たちは、井上ひさしのコントをどう感じるのだろうか?

7月9日記

静かなお喋り 7月6日

静かなお喋り

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