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客席放浪記

第40回特撰落語会

2012年11月4日
日本橋社会教育会館ホール

 開口一番前座さんは、柳家おじさん『狸の札』。頑張ってね。

 今日は一之輔二席に、私がぜひ観たかったコラアゲンはいごうまんのノンフィクション体験漫談が観られる。

 春風亭一之輔はマクラで、自分の体験談で笑いを取ったあと、「今の話、後半は自分で作ったんですが、どうもオチを付けないといられない」と告白して、コラアゲンはいごうまんのノンフィクション体験漫談との差を説明しながら、『蝦蟇の油』へ。これも序盤の口上のところは、ノンフィクションの面白さが味わえる。
 「私らね、酒飲んで高座上がっちゃいけないんです。飲んじっゃたら出来ないですよ。中には川柳川柳師匠みたいに飲めば飲むほど出来がいいなんて人もいますが」 酔拳ならぬ酔落語だね。
 酔っぱらった蝦蟇の油売りも一之輔のはもう、かなりいっちっゃてる。「おったちあ〜い!」と素っ頓狂な声を上げて、もう意識も半分無くなってる。飲んだり食べたりしたものを吐きそうになっているのを見て、近づいてきた子供たちも「逃げろー!」
 半紙を取り出して日本刀で細かく斬って見せるところでも、「お客様のお好みの形に切り分けて御覧に入れま〜す」「藤娘!」「できるかぁ!」

 さて、コラアゲンはいごうまん
 最近テレビ局からもらったギャラの明細書という小ネタで、早くも爆笑を取ってから、ヤクザ事務所体験編のサワリをやり、そもそも、自分の芸風で最初に体験したという『新興宗教入門編』へ。
 図書館で『新宗教事典』で調べ上げると新興宗教が6724団体もある。中には神の言葉をジェスチャーで伝えるといういのもあるとかで、「たとえばどうやるんでしょうかね。世界平和だとしたら」と、背中を掻いて世界。おならをしたふりをして平。両腕で頭の上に輪っか作って和ってやるんじゃないだろうかとやって見せて沸かせる。
 結局信者数500人のある新興宗教団体に行く。5000円払って“お伺いの儀”をお願いする。「15年芸人を続けていますが、まったく芽が出ません。どうしたら夢が叶うでしょう」という問いに、神から、芸人を辞めろの声。ついにはコラアゲンはいごうまんがキレてしまうという体験談。爆笑の中にも感動が巻き起こってくるという情熱編になっている。汗だくの熱演にぐいぐい引き込まれてしまうのだから、これも話芸なんだなあ。これに比べりゃ、新興宗教の教祖さんたちは話芸の時点で彼に負けてるね。

 仲入り後が、一之輔の弟弟子にあたる春風亭一蔵。今月二ツ目に昇進したばかり。前座名が朝呂久。一之輔の朝左久時代も憎らしいくらい落語がうまかったが、この人も同じ。隙がない前座落語をする人だった。それも二ツ目になったからか今日の『短命』は弾けていた。
 「ときどきご祝儀をくださるお客様がいるんですよ。先日も二ツ目になったからということで赤飯を作って持ってきてくださった方がいまして、『どうぞ食べてください』って赤飯の箱とポチ袋。ありがたくいただきまして、あとでポチ袋を開けてみたら、ごま塩でした」

 春風亭一之輔のトリの噺は『茶の湯』。この人の『茶の湯』はサゲを最初に言ってしまってから始まる。何といっても凄いのは、この人の茶の湯は怪しげな宗教になってしまうところ。「心を解き放ち、裸になるのだ!」「風流だ!」と、手を天に突き上げる。「世界平和!」とジェスチャーを入れる。背痒屁輪ね。信者を増やそうと、血文字の手紙を書いて知り合いを呼び込む。歩いている何の罪もない人を拉致しては、とんでもない液体を飲ませる。
 コラアゲンはいごまんさんも、こういう宗教を体験してみたらいかがか?

11月5日記

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