直線上に配置

客席放浪記

柳家喬太郎プロデュースとみん特選寄席

2017年4月20日
紀伊国屋ホール

昼の部

 開口一番前座さんは、橘家かな文『松竹梅』。前座修業頑張ってね。

 この会は、ホールで寄席の形式を持ち込もうというコンセプト。前座のあとは二ツ目の登場。柳家喬太郎プロデュースとうたうだけあって、どうやら喬太郎自身で顔付けしたらしい。二ツ目枠は、円丈の弟子から選んできた。三遊亭ふう丈『電気家族』は、電気が身体に流れている特異体質を持った家族の噺。一度聴いたことがあるなと、あとで調べてみたら、去年の3月、池袋演芸場。あのときはふう丈、まだ前座だったんだな。

 昼夜通して、ほとんど落語協会の芸人でプログラムが組まれているが、ここで瀧川鯉橋。これは喬太郎の親戚枠かな? 噺はすっかりお得意になった『元犬』

 ダーク広和のマジック。最前列で観ることができたが、小さなボールやトランプを空間からスッと出す手際の凄さに驚いた。マジシャンって、こういう基本の積み重ねなんだろうなぁ。素人のマジックとは、そこが違う。

 林家彦いち。どうも私は『天狗裁き』という噺が好きではないのだが、これは面白く聴けた。夢で見た噺を教えろという人物がすべて暴力的に迫ってくるのが可笑しい。

 仲入り後に寄席では珍しい浪曲。玉川奈々福『浪曲百人一首』は、百人一首に出てくる恋の歌を、浪曲でわかりやすく解説してしまおうというもの。これ、面白い。歌の意味がわかると同時に、浪曲の世界にわかりやすく誘導してくれる。こういうアプローチがあってこそ、浪曲が今まで聴いたことのなかった人にも注目されるというものだ。

 鏡味仙志郎の太神楽。五階茶碗に大きな驚きの声が上がる。寄席では見慣れた芸だが、これだけまだ観たことがない人が多いとは! これをキッカケに、寄席にももっとお客さんが来てくれるといいなぁ。そういう意味では喬太郎のこの企画は成功したと言えるだろう。

 トリを取る柳家喬太郎は、新宿と池袋の対比をしてみせてを笑いを取る。こういう街を擬人化させて説明することをやらせたら、この人に誰も敵わないだろう。続いて街の中華屋について。こういう日級グルメのマクラもこの人独特の面白さ。さて、こんなマクラで何の噺に繋げるのかと思ったら麺類繋がりで『そば清』。清兵衛さんがそばを食べるところでは三味線が入る。これがやけに可笑しい。

夜の部

 開口一番前座さんは柳家小多け『手紙無筆』。前座修業頑張ってね。

 夜の部の二ツ目枠も円丈の弟子から、三遊亭わん丈『新蝦蟇の油』は、『蝦蟇の油』の改作。普通に『蝦蟇の油』から入って、ジャパネットたかた風蝦蟇の油売りが出てきたりで、大受け。

 このあとも円丈の弟子で三遊亭天どん。「新作がいいですか? 改作がいいですか? それともあまり演じ手のない珍しい古典がいいですか?」と拍手でアンケートを取り、珍しい古典『牛の子』。牛乳が飲みたくて、自分のお母さんが死後、牛になったと言って騙し、牛を飼っている牧場に行く噺。牛が人間の顔を舐めるという所作を、これでもかとやってみせる。なかなか演じ手のいない地味な噺を強引に天どんらしく面白くしているなぁ。

 のだゆき。こういう若い人の芸を見ていると、寄席の色物も、今までになかった芸の流入で、生まれ変わろうとしているのを感じる。寄席も新しくならなくちゃ。

 落語教育委員会枠(?)からの三遊亭歌武蔵は、相撲のマクラをたっぷりやって笑わせてから『稲川』。地味で笑いの少ない相撲噺だから、マクラの笑いが効いてくる。

 柳家甚語楼は、粗忽な殿様と三太夫が出てくる噺『松曳き』。甚語楼のは比較的落ち着いているのに粗忽のタイプ。

 ロケット談団の漫才。去年は三浦が脚を骨折したが、今年は倉本が胃に穴か開いて入院したとのこと。相変わらず、森友学園、浅田真央引退、豊洲市場移転などのニュースをまな板にして、アブナイ漫才。

 柳家喬太郎、夜の部のトリは『夢の酒』。私は去年の夏に立て続けに二回聴いて以来。おかみさんが現代的かつ漫画的なのも変わっていない。現実世界で喬太郎が奥さんにアダルトDVDを買った夢を見たという話をして問い詰められたというマクラが可笑しい。夢の話もうっかりできない。

4月21日記

静かなお喋り 4月20日

静かなお喋り

このコーナーの表紙に戻る

トップ アイコンふりだしに戻る
直線上に配置