直線上に配置

客席放浪記

虎ノ門末廣亭

2013年4月7日
イイノホール

 来年真打昇進が決まったと挨拶する桂才紫。よかったね。『黄金の大黒』も、なんだか楽しそうに。

 昨日観たばかりの立川談笑。今日は『粗忽の釘』。箪笥を担いで行方不明になる部分を膨らませて爆笑の高座にしている。背負った箪笥の引き出しが、方々で迷惑をかける。なるほど、そういう手があったか。かと思うと隣の家に上がり込んで、奥さんとのノロケを聞かせるところでは、ちょっとホロリとさせたり。エネルギッシュな粗忽者という感じだな。

 柳家喬太郎『小言幸兵衛』は、最近よく当たる確率が高い。それでいて聴くたびに細部が少しずつ変わっている。きっと喬太郎がもっと年を取って高齢者になっていくと、さらに変わっていくんだろうなぁ。

 仲入り休憩で、抽選会と新宿末廣亭の席亭の挨拶。大野善弘氏が新しい落語会を立ち上げるに当たり、末廣亭の名前を貸してくれと言われたとのこと。どうやらこれから、自由な発想の落語会の企画が次々と生まれていきそう。また楽しみが増えた。

 林家二楽の紙切りは、鋏試しの桃太郎のあと注文で、歌舞伎座、ヘビ千匹、長嶋茂雄。ヘビ千匹は、ヘビが棒を咥えて線を引いてるところ。ヘビ線引き。ヘビがかわいいの。

 『笑点』の収録から回ってきた春風亭昇太は、最近得意にしているマクラを始める。オリンピック、相撲、加山雄三。もう、生き生きしているなぁ。浜松で米朝師匠と披露口上に上がった時のことが可笑しい。米朝師匠、ボケたというキャラクターを演じているのかも知れないな。
 と老人が主人公の『人生が二度あれば』に。なるほど、上手い繋ぎ方だ。この噺、久し振りに聴いた。以前はただ普通に笑っていたが、自分自身がリタイヤしてみるとこれは見方が変わってくるのを感じる。過去に戻ってみたいという願望は以前聴いていたときの比ではない。この噺の主人公のように、なぜだか知らず泣きたくなってしまうことがある。身体も以前のように動かない。そして、物忘れも激しくなっている。笑って笑って、そしてサゲを聴くと、以前の感じ方とまったく違う自分がいる。

 喬太郎や昇太が高齢者になったときに、これらの噺をどう演るのか聴いてみたい。それまでこちらが生きていられたらいいのだが。

3月7日記

静かなお喋り 4月7日

静かなお喋り

このコーナーの表紙に戻る

トップ アイコンふりだしに戻る
直線上に配置