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客席放浪記

東洋館スペシャル寄席2012Vol.34

2012年10月31日
浅草・東洋館

 習志野ごんべいの漫談。「ロシア製のパソコン買ったんだって?」「ああ」「ちゃんと日本語出てくるの?」「ああ、出てくるよ」「漢字変換も問題なくできるの?」「ああ、だけどなぜか、ほっぽうりょうどと打つと、ヘンカンできないんだ」 政治ネタが多いが、それほど辛口というほどでもなく、ほんわかとした笑いで客席を暖めてくれる。

 柴又で寅さんになりきってガイドの仕事もすることがある野口よういち。寅さんの恰好で出てきて渥美清の物まね、というよりは、寅さんの物まねかねえ。ほかにも、淡谷のり子、岸田今日子、大屋政子、美川憲一、田中那衛、田村正和など。

 水道工事の作業員の恰好で客席の後ろの扉から入ってきた、やまけいじ。いろいろなものを楽器にして演奏する芸。プラスチックの水道管二本を伸び縮みさせて音階を出してみせた。続いて大小いくつものペットボトルを頭にぶつけて音を出し『うさぎとかめ』(もしもしかめよ)。さらには頭、足、胸、腹、腰に音階ごとのベルを付けて『夕焼け小焼け』。「ベルリン・フィルハーモニック・オーケストラだよ!」

 さあて次が予断ならない芸人プッチャリン。チャップリンの恰好をして出てきて、今日もいきなり客席乱入。客いじりが始まる。危ない、危ない。ジャグリングや手品まで取り入れて、舞台は物でいっぱい。どうするのかと思ったら、ちゃんと自分で片づけて帰って行った。

 豹柄衣装のエリザベス。大阪のおばちゃんに扮した漫談だ。いきなり三平ストアで買ってきたという袋入りのサクマドロップをお客さんに配る。「懐かしいでしょ。昔どの家庭にもあったでしょ。缶の蓋が硬くてコインで開けたりして」 あったあった。「若いころはね、優しい男性が好きになったものよ。でも今は金持ちの男性。あるいは力持ちの男性が好きだったのが、今は土地持ちの男性」 女綾小路きみまろの線かな。

 玉川平太朗は、いろいろとうんちくを教えてくれる。「温泉マークって湯気が三本立ってるでしょ。あれはね、一番左が3分。真ん中が8分。右が5分を表しているんです。まず3分入って、8分で身体を洗い、5分入って出るのが、温泉の正しい入り方」 ふーん。勉強になりました。ということは、温泉でのに入浴は16分が目安か。

 おばあちゃんの人形との会話が楽しいポンちゃん人形の腹話術。「おばあちゃん、健康には気を使っている?」「ああ、あたしゃ毎日サイダーを飲んでるからね」「サイダーって健康にいいの?」「そうだよ、ミツヤサイダー(野菜だ)だからね。うひゃひゃひゃひゃ」

 コント青年団のコントは、融資の相談に来た中小企業の社長と銀行員。浅草の伝統的なスタイルのコントだ。もしかして、倒産しかかった中小企業の社長さんが、気分を変えに東洋館に来ていたとしたら、現実に引き戻されてグッタリするか、いや、逆にこのコントを観ると元気になるかもしれないなあ。

 早い出番に変えてもらったらしいタブレット純。なにやら下手の方に立っている。これはギターの延長コードを持ってくるのを忘れたからでそうで、なんとなくやりにくそう。のり弁の主役白身魚のフライへの愛を歌った『いとしのメルルーサ』。そのB面用に作ったという、弁当に入ってくるバランをテーマにした変身ヒーロー主題歌風『行け!人造バラン』。店のボイントカードがテーマの『ポイントなんていらないわ』。そしてラスト・ナンバー。どうやら本当にCDを出して今や廃盤の『夜をまきもどせ』。販促用に作ったという携帯電話番号入りのティッシュを客席にまきながらの熱唱。こちらは撒き戻さないのね。Let's Rewind The Night Togetherとでもいうのかね。ウヒャヒャヒャ。コンビニのシフトに入る時間が迫っているとかで、慌てて帰って行った。ガンバレー!

 だるま食堂は、いつものボインボインショウ。日本の歌シリーズが最近の私のお気に入り。

 仲入り後は、曲芸の太平洋。とにかく元気がいいのが好感を持てる。失敗しても、お客さんに謝ってまた続きを始める。思わず、「がんばれー」と応援したくなるんだよねえ。

 ペペ桜井のギター漫談は、落語協会の興行でよく観るから、「ペペさん、何でここに?」となる。「先日、仕事のあとで居酒屋で飲んでたら、お客さんがビール差し入れてくれました。『今、ご覧になってたんですか?』って聞いたら、『いやあ、あちこちで観たから』『それはありがとうございます』『最初は調布だろ。それから網走』 ? 刑務所の慰問で観たんですね」

 クールポコ。テレビのネタ見せ番組がほとんどなくなっちっゃたので、お久しぶり。うれしいことに、あの餅つきネタだ。テレビで観るより客いじりが多い。「彼女にバラの花束を贈った奴がいたんですよ」「なーにー!
 やっちまったな! 男は黙って、球根! 男は黙って、球根!」 お客さんに「どうですか?」と聞く。ちょっとうるさいお客さんがいて、「球根でサゲるなら、バラじゃなくて、チューリップだろ」 なるほど。バラの球根ってないものなあ。球根だったらチューリップ、ヒヤシンス、フリージア、ダリア、・・・シクラメン。そうだシクラメンがいい。♪真綿色した シクラメンほど 清しいものはない 出会いの時の 君のようです・・・だもんね。布施明が怒るかもしれないけどさ。アハハハ。

 新宿カウボーイの漫才。相方の人が言うように、ボケの人がボケというより、なんか「元気のある人」になってる。面白いけど、ちょっと騒々しいね。これからも元気でね。

 アルコ&ピースは、軽いお喋りのあと、コント『高級店』。どうやら高級ブティックらしい店に入ってきた男。「シルエットがタイトなのが欲しいんですが」「それだと、イワシ、サンマ、あたりですかね」 なんとブティック風魚屋というネタ。好きだなあ、こういうの。コント青年団みたいな古いタイプのコントと、最近の新しいコントが同居してるなんてのは、東洋館くらいでしか観られないでしょ。

 ハマカーンは、すっかり「下衆の極み」で有名になった漫才。今回もこれを楽しみにしていたら、違うアプローチ。ふたりが焼肉屋に行ったきのことを神田が浜谷に絡むといったネタ。「デザートの抹茶アイスクリームを、なんで『一口どう?』と誘ってくれなかったの?」「お前は女子か!?」 可笑しい、可笑しい。「下衆の極み」よりも面白いよ、これ。

 トリは、あした順子。相方のひろしが体調を崩しているので、今回はピンで漫談。ひろしももう90歳か? ちょっと心配。順子も、もう80歳になるが元気だ。ももクロの名前が出てくるあたりはまだまだ現役。ひろしとやっていた漫才のネタも織り込みながらの構成は。喋りも淀みなく、なかなか達者なところを見せてくれた。

11月1日記

静かなお喋り 10月31日

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