池袋演芸場十月下席昼の部 川柳つくし真打昇進披露興行 2013年10月24日 14時半を回った頃に入場。満員。高座は柳亭市馬が『真田小僧』をかけていた。「おとっつぁん、寄席に落語聴きに行った行ったことある?」「あぁ、おとっつぁんは軍歌はもっと好きだ。今、池袋演芸場行くと聴けるぞ」 続く林家木久扇は、お馴染み『彦六伝』。もう若い落語ファンは、林家彦六(八代目正蔵)は、こういうカリカチュアした笑い話のようなエピソードしか知らないんだろうなぁ。私が八代目をよく聴いていたのは中学・高校のとき。八代目は70代前半だった。今、木久扇は76歳。ちょうどあのころの八代目くらいの歳になるのか。だんだん、“らしく”なってきた。 仲入り後は、披露口上。幕が開くと、下手から、司会役の柳亭市馬、川柳つくし、つくしの師匠である川柳川柳、そして落語協会理事相談役林家木久扇。 市馬の司会ぶりは、やはり名調子で聴いていて惚れ惚れする。「つくしは、前座、二ツ目とまことに精進し・・・また師匠が師匠ですから、大変な苦労を・・・。師匠がギターをやれば、つくしはウクレレ。いつチンドン屋になっても大丈夫」 林家木久扇は女性の弟子をふたり持っていることから、女流の落語家がいかに大変かを語り、つくしがいかに利口でかつ、師匠の面倒見がいいかを褒める・・・が、いつの間にか川柳の酒の上での失敗話へずれて行ってしまう。 川柳川柳も、つくしを褒めて、入門当時のことを語るうちに、いつの間にか焼酎の話になっている。このグズグスのまとまりのなさが、寄席の披露口上の楽しさ。これでいいんだよね。 松旭斉美智・美登のマジック。喋り、お客さんイジりも達者。お客さんに『オリーブの首飾り』を歌わせながらのマジック。絵本の中のキャンディーが本から消えて、現実に出てくる。出てきたキャンディーを客席に撒く。「これ買ってくるのもタイヘンなのよー」 川柳川柳は、久し振りに黒紋付きを着たとのことで、「こういうのを着ると、私も名人三遊亭円生の弟子ですからね、古典を・・・やるわけない」と、今日も軍歌を歌いまくる『ガーコン(歌で綴る太平洋戦記)』。 「木久扇師匠はベンツに乗ってるんです。それを弟子に運転させるんですが、弟子はジーパン姿で、髪は起き抜けでボサボサ。これをネグセデスベンツ」 五明楼玉の輔は『生徒の作文』。 柳家小菊の俗曲は賑やかに。そこに都々逸をいくつか挟む。 「♪逢えば短い 逢わねば長い ましてなおさら長い夜」 トリの川柳つくしは『ソングコップ』。この二年くらい前からかけている噺で、歌を歌うところもたくさんある噺。師匠川柳が『ガーコン』、ラテン音楽漫談で一世を風靡した人だから、これはまさに、こういう場に打って付けのネタ。結婚式の披露宴がクライマックスにあり、めでたい展開になるのもいいし、サゲもきれいだ。 大きな拍手の中、頭を下げていると、楽屋から前座さんがウクレレを持ってくる。ちょっとしたアンコールの余興のように、ウクレレ漫談『来世頑張れ』。 追い出しが鳴って、幕の向こう側では〆が行われている。つくし師匠、真打昇進おめでとう。華やかなお披露目でした。 10月25日記 静かなお喋り 10月24日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |