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客席放浪記

鶴瓶噺2015

2015年6月6日
世田谷パブリックシアター

 『鶴瓶噺』、何年ぶりだろ? ずいぶんと行ってなかったな〜。
 以前は青山円形劇場だった。あそこは舞台と客席の距離が近かったから臨場感があった。とにかく笑福亭鶴瓶ひとりが出てきて、ずーっと喋り続けるだけ。こういう芸はやはり狭い会場の方がいい。しかし鶴瓶噺も大人気になっているようで、そんなに狭い会場というわけにもいかなくなっているのだろう。今日も立見まで出た。
 余分にチケットを買ったという人から回ってきたチケットは、かなり上手側とはいえ最前列。何にもない舞台上手には小さなテーブルがあり、その上には置時計が置かれている。私の席はちょうどこのテーブルの前辺り。鶴瓶は舞台の上を右に左に歩きながら話したりするから、私の真ん前まで来て話したりすることも。うわーっ、至近距離で鶴瓶。

 そんなすぐそばにいる鶴瓶。鶴瓶本人も一般人との垣根を低くして接していると自ら言う。芸能人らしいオーラがないとは思えないのだが、街で逢った一般人からオモチャにされまくる様子を自虐的に語るところからスタート。紙もペンも持ってない人からいきなりサインを頼まれるなんていうのは序の口。風呂場でタオル巻いてたら、大阪オバチャンたちにフルチンにされそうになった話などは、いかにも鶴瓶らしい。

 自虐話は続く。齢を取ったのか、物忘れがひどくなってきて、ATMで下したはずの20万円の現金が消えた話。大きなキャリーバッグを置き忘れた話。財布を置き忘れた話。ホテルの部屋を間違えた話。ここまでひどくはないが、鶴瓶とほぼ同年代の私も、これに近いことが最近はよくある。

 タクシーの運転手の話。年中タクシーを利用している鶴瓶だから、いろいろ変わったタクシーの運転手に当たるのだろうが、よくこれだけ不思議な運転手に当たるものだ。羽田空港でタクシーに乗って、運転手から空港のタクシー乗り場で客待ちを3時間したと聞かされたって、私も一度そう言われたことがあったなぁ。最後のホテル出禁のタクシー運転手の話は凄いな。今時、そんなヤクザな運転手がまだいたとは。

 ほかにも、毎度出てくるマネージャーネタ。そうかと思うと病院見舞いのネタ、超能力者と思われたというネタで爆笑して、最後は兄弟弟子と、30年前に亡くなった自分の師匠、笑福亭松鶴との思い出話。破天荒な師匠であったけれど、最後はホロリとさせられるエピソードで締めくくった。

 人生の目的とは何か? それは金を稼ぐことでも、名を残すことでもなく、日常を大切にして生きること。毎日心から「おはよう」「ありがとう」が言えること。その日常の積み重ねこそが人生なんだという言葉を残して下手へ去って行った鶴瓶。定刻どおりに出てきて二時間の予定を25分オーバーして、まったく途切れることなく語りまくった。物忘れが激しくなったという話をしながらも、まだまだ頭の中はしっかりしているようだ。

 自虐話を暗くなく、爆笑に持って行き、楽しく聴かせることにかけて、この人は天才だと思う。

6月7日記

静かなお喋り 6月6日

静かなお喋り

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