海をゆく者 2014年12月13日 Parco劇場 始まって最初の方で、アイヴォン(浅野和之)に「眼鏡が無い」という台詞があって、その後も眼鏡が見つからないまま、ときどきまた眼鏡を捜している場面が出てくる。私も年中、眼鏡をどこで外して置いたのかわからなくなって家中を捜しまわるという事をよくやっているので、この気持がよくわかる。 五人の出演者は全員男。それも全員いい年をした男たちという設定。クリスマスイブの一日の出来事。ははあ、外国のクリスマス・ストーリーって必ず幽霊が出てくるというのがお決まりなんだよなと思っていたら、ちゃーんと幽霊(そのものではないけれど、それに近い存在)が五人の中に混じっていたので、「やっぱり正しいクリスマス・ストーリーなんだ」とニヤッとしてしまった。 主人公のシャーキー(平田満)は禁酒生活をしているが、あとの四人は全員のんだくれ。朝から酒呑んじゃってる。人によってビール党の者もいれば、アイリッシュ・ウイスキーが大好きっていう奴もいるけれど、とにかくみんな酔っぱらってる。ここはシャーキーのお兄さんリチャード(吉岡鋼太郎)の家なのだが、最近よく目が見えなくなってきているということもあるのかも知れないのだが、男やもめで家中散らかし放題。開演前は緞帳が降りているのだが、その緞帳からはみ出して、靴やら衣類やらが脱ぎ散らかしてあり、雑誌まで床に散乱しているという有り様(笑)。芝居が始まってからもスナック菓子は床にぶちまける、酒はこぼす、ソファを叩けばホコリが舞い上がる、煙草はひっきりなしに吸われる。きれい好きな人が見たら卒倒しそう。 最初のうちは、この兄弟とアイヴォンの飲んだくれ模様が描かれていく。しょーもないダメな男像が延々と描かれていて、これは日本で言うとお正月なんだなと思う。仕事も休みで朝から飲んでいる日本の正月。これが欧米ではクリスマス休暇ってことになるんだろう。 物語が急展開を見せるのは、ニッキー(大谷亮介)がロックハート(小日向文世)を連れてやってくるところから。みんなで酒を飲み、やがてあることからシャーキーも禁酒の誓いを破って飲み始める。そして五人はポーカーゲームを始めることになる。これがなかなか緊迫した展開で面白いのだが・・・。 芝居の冒頭でアイヴォンが眼鏡を捜していたというのが、まさか伏線になっているとは思わなかった。こういう日常の何でもないようなことをうまく伏線に使う面白さ。良く出来ている脚本でした。そして五人の役者の丁々発止の芝居っぷりも見ごたえがあった。 12月14日記 静かなお喋り 12月13日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |