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客席放浪記

Vシティ寄席

2015年10月12日
Vシティ・コミュニティホール

 知人の住むマンションの自治会が主催する落語会に、去年に続いて今年も誘われて観に行った。このマンションの近くの足立区在住ということで、林家たけ平にお願いしてこれで五年目だそうだ。そのたけ平も来年三月、真打昇進が決定した。

 去年観に行ったときに、めくり台がなくて、即席のめくり台を使っていたのを目撃して、めくり台なら、翁庵寄席で使っていたものが残っているので、必要なら差し上げますよと言って取りに来てもらった。会場に行ってみたら、ありました。うちでかつて使われ、ここ数年は物置のなかで寂しそうに眠っていためくり台が、誇らしげに立っているじゃないですか。よかった、よかった。

 開演直前、知人からネタ帖を入れたロッカーの鍵がなくて開かない。せめて去年の演目を憶えてないかという連絡。ケータイで客席放浪記にアクセス。去年のネタを書きとって渡す。これはきっとたけ平さんも驚いたろう。何しろ去年は駒次が自作の『旅姿浮世駅弁』を演っていた。この演目を知っているなんて何者だと思われただろうだろうなぁ。ウフフフフ。

 最初に高座に上がったのは今年二ツ目になったばかりの林家なな子。林家の芸風にのっとり、一分線香即席噺から。「かあちゃん、ズボン破れた」「またかい」といったようなやつ。お客さんでオチを先に言ってしまう人がいて、なな子が慌てる様がおかしい。そこから『天失気』。こういう噺は、こういう場所と客層によく受ける。

 二ツ目になって一年といったところの柳家緑太。池袋の『福袋寄席』からこちらに回ってきたらしい。「いい足袋を買おうと思って浅草の足袋屋さんに行きました。いくらだと思ったら3700円。いい値段しました。いいタビ夢気分。これはここ一番という時に履こうと思って、今日は・・・家に置いてきました」。ネタは『ねずみ』。うわー、またここでも『ねずみ』だよ。この噺、ここ数年私はほとんど聴くことがなかったのに、三回続いた。先月、末廣亭下席の夜トリで鯉朝、続いてその二日後に深夜寄席で鯉丸。そして二週間ほどした今日にも『ねずみ』。重なることってあるもんだ。やはり時計を見るとこの噺の尺は25分。鯉朝の場合は、もう少し伸びた感じだった。緑太はまだ二ツ目になって一年というわりには、この結構難しそうなネタをすっかり自分の物にしている感じがする。いい仕上がり具合だと思う。

 林家たけ平は、声が大きくて押しが強い芸風。この線の太さ、強さがいい方に作用していると思う。もう立派に真打としてやっていけそう。今日のネタはそんなたけ平にはぴったりだと思われる『荒大名の茶の湯』。去年は『源平盛衰記』。ひょっとしてこの手の地噺を得意としている人なのだろうか? ところどころで入る脱線も、いかにも林家の芸風そのまま。まさに林家らしい真打の登場する来春は、とても楽しみになって来た。

10月13日記

静かなお喋り 10月12日

静かなお喋り

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