ビクター二八落語界CD発売記念 隅田川馬石・春風亭一之輔二人会&トークイベント 2014年12月7日 原宿Vacant 多目的イベントスペース[Vacant]での落語会。隅田川馬石と春風亭一之輔のCD発売記念興行。PRを兼ねている上にインターネット配信までしてしまうものに3800円という料金は高いよなぁとは思ったが、トークコーナーもあるということでチケットを買ってしまった。 壁は木材がグルリと取り巻いていて落ち着きがあるが、高い天井はコンクリートむき出し。こういうのを、オシャレなスペースと言うのだろうか? 高座をかなり高く組んである。高所恐怖症の演者は落ち着かない気分になるのではないか? ただ観る側としては、これなら後ろの方で観ても観やすい。もっとも、前の方だと首が疲れる。会場作りって難しい。客層は若い。落語でも中高年は原宿に観に行こうとは思わないのかもしれない。 CD発売イベントということで、隅田川馬石の一席目は化ける噺『王子の狐』。CDが売れますようにと縁起担ぎも兼ている。いわば狐版『鰻の幇間』だけど、幇間とそれを騙してやろうという悪い客のような悪意のぶつかり合いがないので、後味がいい。また馬石が演ると、狐はかわいいし、騙す人間にもどこか優しさが感じられるね。 春風亭一之輔の『お見立て』を聴くのはこれが二度目だと思う。田舎のお大尽と喜瀬川に、さんざん翻弄された喜助が、後半になると開き直るところが可笑しい。墓はどこだと訊かれて、山谷だと答えてしまった喜助。喜瀬川に「なんでカムチャッカって言わなかったの!」と言われて、「カムチャカだろうと来ますよ、あの人」と答える辺りから人格が変わってしまう。もう精神に異常をきたしたんだろうな。何があってもうれしそうな喜助になってしまうのが一之輔流。 春風亭一之輔の二席目はマクラにおかめそばのことを振りながら『時そば』。最初の一文誤魔化す男の詐欺に気が付くところは、人によっていろいろ演出が異なるが、一之輔の気が付き方は自然で、くどくなくていい。ほとんど与太郎にしてしまう人もいるが、このくらいの自然さがいい。二番目のそば屋の屋号は、丸にしゃちほこ。これで名古屋。尾張屋にしてしまいそうだが、そこを名古屋にしてしまった可笑しさ。これだよね。そしてそば屋がやたらと上から口調なのが新鮮。普通、どの演者でも二番目のそば屋もへりくだった態度にしてしまう。これは目からうろこの演出。 トリの隅田川馬石。自身が弟子入りしたときのことやら不審尋問を受けたエピソードのマクラから『締め込み』。この人、一席目の『王子の狐』でもそうだったけれど、以前より口調やその落語の世界観が優しい視点になって来たような気がする。それは一之輔の落語の世界とは正反対にあるようだ。その意味では、この二人会は面白い企画だったといえる。まあ、白酒・馬石兄弟会の方が、よりくっきりしてくるかもしれないが。『締め込み』の夫婦と泥棒も、三人とも血気はやっているわけではない。どこか力が抜けている。そこのところが気持ちいいんだなぁ。 そのあと、トークイベント。聞き手はやきそばかおると高山瑠奈。落語を初めてナマで聴いたという高山瑠奈がときどき鋭いことを言ったりするのが印象的。噺を憶えていく過程が馬石と一之輔がそれぞれ特徴があるといった話が面白かった。 最後は、衣類のコーテイネイターによる、馬石と一之輔のファッションショウ。なんだかいかにもな企画で、これ、いらないんじゃないの? 12月8日記 静かなお喋り 12月7日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |