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客席放浪記

第五回よみらくご夜公演

2016年1月16日
よみうり大手町ホール

 開口一番、前座さんは林家あんこ『つる』。前座修業頑張ってね。

 神田松之丞の持ち時間は15分。去年の9月、『深夜寄席』でも聴いた『谷風の情相撲』。あのときもマクラ5分、本編10分だった。余計なものを外して、谷風と佐野山の一戦のみにスポットを当てた、聴く者にとっては見せ場だけ聴けるというお得な一席。ホール落語への名刺代わりとしては、かなりのインパクトをお客さんに与えたのではないだろうか。

 立川生志。「火事の多い季節になりました。私は火事でだけは死にたくない。火事で死んだら翌日の新聞には、『生志が焼死』」。
 ネタ出しは『二番煎じ』。25分の持ち時間と聞いて引き受けて、今日来てみたら20分でやってくれと言われたそうな。「20分ではできません!」。そうだろうなぁ、『二番煎じ』は普通35分くらい欲しい噺。25分でも短いと思ったが、きっちりとツメるとこはツメた上で、生志らしい笑いを加えていた。

 浅田次郎の『天切り松闇がたり』を読んで、泥棒のかっこよさに惹かれていると言う古今亭志ん輔。「落語の泥棒はこうはいかない」と『転宅』。師匠志ん朝の軽い調子を忘れない口調が泥棒のへなちょこさを感じさせて楽しい。

 この落語会の目玉は、仲入り後の演者に一時間与えるということらしい。今日は春風亭一之輔。よく話す自分の子供の話から『子別れ』の中と下。この噺、長いものだから寄席でトリをとっても下だけのことが多い。しかしやはり上はともかく中から聴きたい噺。いきなり下だとどうも噺としてあざとすぎる気がする。どこか大人っぽいわりに生意気に成長してしまった亀ちゃん。別れた父親にも減らず口を叩くくせに、本当はお父さんのことが好きでたまらない様子が感じ取れる。それがマクラとも繋がるのだから一之輔の構成力はすごい。一之輔らしい笑いを無計画に散りばめているようで、実は周到に全体を考えているような気がする。

 この落語会、今まで料金も高いし(4,300円)、ちょっと敬遠していたが、トリに一時間与えるという企画が面白く思えてきた。受付で次回のチケットを売っていたので、それも購入してしまった。

1月20日記

静かなお喋り 1月16日

静かなお喋り

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