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客席放浪記

第7回よみらくご

2016年8月26日
よみうり大手町ホール

 読売の長井好弘さんが番組を組んでいるらしい会だけあって、面白い企画を次々と打ち出してくる。私も一時期、席亭をやったことがあるが、毎回いろいろと企画ものを考えていた。しかしいろいろと制約は多かったから、できることには限りがあった。そこへいくと、これだけの設備のホールで、、しかも予算は大きく使えるとあらば思い切ったことができる。羨ましい限りだ。
 今回は。幻想江戸噺ときた。しかも白鳥の『メルヘンもう半分』と、さん喬の『雪の瀬川』をぶつけるなんて,、なんとも思い切ったことをしたもんだ。

 開口一番の前座さんは名前も言わずに『まんじゅうこわい』に入ってしまった。誰だと思ったら,、次の宮治が、三遊亭金の助だとフォローを入れていた。この人は去年二回観ている。あのときは二回とも『道具屋』。落ち着いた噺のできる人で、これからどう伸びて行くか楽しみな人。時間がないらしく、饅頭まで行かずに高座を降りた。

 桂宮治は二ツ目ながら、この会二度目の出演。しかも来年一月の会にももう出演が決まっている。勢いのある落語に長井さんも注目しているのだろう。読売を意識してか「私、ジャイアンツ・ファンです」とアッピール。「しかし、こところ連夜の逆転負け。でも安心してください、今日からの対戦相手、横浜DeNAベイスターズ。今、一回裏で勝っています。横浜DeNAが!」。持ち上げているのか落としているのか。
 『元犬』はこのところ、柳家三三のものが圧倒的に面白くなっているが、宮治のものもなかなか。口入れ屋の旦那は白犬が人間になったことを理解しているという設定。これだと噺がうまく運ぶ。このあとの隠居もまさか元は犬だと知らないわけだから、被ってしまって噺全体がメリハリが付かなくなってしまいかねないから、これはいいアイデアだと思う。

 「前座さんの楽屋仕事はたいへんです。楽屋には前座がしくじりを仕出かそうものなら、怒鳴りつけて、お茶をひっかける師匠もいますから。なんでそんなことをするかというと、よそではできないから」。入船亭扇辰『化け物使い』。人使いの荒い隠居と、楽屋で威張っている落語家の共通点をうまく例えたマクラ。噺のなかの隠居の怖いこと。前座のように使われる化け物が可哀想になってしまう。

 怪談と、ほのぼのアニメの合体『メルヘンもう半分』三遊亭白鳥ったら、またもや、この噺のために『もう半分』を、K助師匠に教わったらしい(笑)。『もう半分』を『ムーミン』のキャラクターで演るというこの噺、「もう半分ください」という台詞が、もうほとんど意味を持っていないんだから可笑しい。でもどうしても原型を留めるためだけに、この台詞を言う。そこが落語好きにはツボになって笑いが起こる。

 仲入り後、柳家さん喬の大作『雪の瀬川』通し。1時間25分あった。上下に分けて演じられることもある。それでも差支えはないが、これはやはり通しで聴きたい。真面目一辺倒で本の虫の若旦那が、吉原の花魁にコロッといかれてしまうのは『明烏』と同じだが、「世の中のことはすべて本に書いてある」と博学さを自慢する前半から一転。その若旦那が世の中、本に書いてあること以外のことの方が重要なのだと思い知らされる。それは一方で、抜き差しならない人間の業だという結末。時間的にも内容的にも、一本の映画を見せられたかのようだ。

 結果的に、『メルヘンもう半分』と『雪の瀬川』だけでよかったんじゃないか。もうお腹いっぱい。もっとも終演時間が遅くなって、お腹がグーと鳴ってしまったが。アハハハハ。

8月27日記

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