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客席放浪記

第9回よみらくご

2017年1月26日
よみうり大手町ホール

 落語芸術協会の二ツ目11人で作る成金メンバーから5人と、落語協会の柳家権太楼が一席ずつやって、最後に権太楼が成金メンバーの噺の感想を述べるという企画。この最後の権太楼による講評がズバリ的を射ていて、さすがだった。

 春風亭昇也『寄合酒』。権太楼も言うように、昇太ゆずりの「軽さ」がいい。それと指摘されていたのが「味噌」。以前はこの噺の「味噌」の部分はあまりやられていなかったのが、最近はこれをやる人が多い。しかしこのような糞尿に関する下ネタはどうしても聴く側としては引いてしまう。子供は喜ぶのかもしれないが、私も苦手で、だから『家見舞い』、『勘定板』、『禁酒番屋』といったネタは嫌いで、聞き流してしまう傾向がある。それをあまり汚く感じさせないで、サラッやるというのは、なかなか腕がないとできないものだと思う。

 瀧川鯉八『やぶのなか』を聴くのはこれが三回目だと思う。権太楼の言う「わからない」は、正直に言って同じ思いで、私は三回聴いてもよくわからない。しかし深夜寄席で聴いたときに若い人が大笑いをしていた。これはもう私の笑いの感性が古いのかもしれない。権太楼と同じ思いだ。

 柳亭小痴楽は、珍しい噺『磯の鮑』。三遊亭兼好から貰ったそうだ。それほど面白くない噺なのて、今まで演じ手も少なかったが、最近は若手がよく取り上げているようだ。それにしても小痴楽は上手い。キャラクターの面白さ、丁寧な演じ分けだけでも聴かせてしまう。

 柳家権太楼は、高座に上がってから何をやろうか、しばし考えていたが『短命』。少し長めの丁寧な『短命』だった。最後のおかみさんも凄いが、その前の隠居との問答だけでも充分に笑える。ここのところがしっかりしているから、あとのおかみさんの部分も、より可笑しくなるのだろう。

 桂宮治『七段目』。権太楼が「あなた、芝居、あまり好きでないでしょ」と言ったひと言が鋭かった。それはいい悪いではなく、あまり芝居が好きな人が芝居噺をやると、それは落語ではなく芝居そのものになってしまい、落語からは遠ざかってしまうという指摘。宮治の八方破れみたいな『七段目』は落語として面白かったものね。こういう芝居噺なら私も付いて行ける。

 神田松之丞は、この手の落語会だと、受け狙いの派手な噺を持ってくることが多いが、今日は勝負に出た。『真景累ヶ淵 宗悦殺し』。笑いもない陰惨な噺の、しかも序なのだが、会場はシーンと静まり返って聴き入っていた。権太楼が「久しぶりに客を呼べる人を観た」と最高の褒め言葉。さらに「(講談界を)背負って立ちなさい」と言う力強い言葉も。

 権太楼によるダメ出しがあるというので、やる方も緊張感があっただろうなぁ。

1月26日記

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