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客席放浪記

第13回よみらくご

2018年1月25日
よみうり大手町ホール

 柳亭小痴楽が、本当はこのあとに出る松之丞が、自分より二年ほど後輩にあたるので先に出るのがスジなのだが、本人が開口一番じゃ出ないと言ったとかで自分が先に喋ることになったと説明。「でもふたりは私生活でも仲がいいんですよ」と言いながら、一緒に旅行に行ったときの松之丞の様子をディスる。アハハハハ。
 ネタ出しが出ていた『浮世床』は、夢の部分だけ。

 その神田松之丞、主催者側とのやり取りで、「何をやってもいいよ」と言われながら、「『季節がら義士伝がいいな・・・できたらチャンバラ・・・安兵衛にしましょうか』って、結局そっちで決めてるんじゃないか!」
 しかし、『義士銘々伝 安兵衛駆け付け』とは、上手い選択。このネタを勢いのある若手にやらせるというのはうなずける。私は松之丞では以前一度聴いているが、あのときの「うるせぇ! はばぁ!」が今回聴けなかったのたが残念。客層に配慮したのかな?

 柳家さん喬は仲トリに『百年目』をネタ出ししている。『百年目』はどう短くしても40分以上かかる。それがさん喬ともなると、もっと長くなりそうだというので、前方ふたりは20分以内で高座を下りている。始まったらやはり50分あった。
 さん喬だと、登場人物がみんな心根が優しくなる。
 仲入り時に、知人と話していて、やはりこれは上方の商人の噺だよなということになる。東京の感覚で行くと、最後の店の旦那が番頭に話をするところがくどい。番頭をからかうところもくどく感じる。東京の噺だともっとサラッと進行させるところじゃないかな。しかし私の好きな話であることには変わりはない。

 仲入り後は、玉川奈々福の浪曲。奈々福も主催者から゛何やってもいいよ」と言われたそうだが、「『やはり玉川で浪曲といったら清水次郎長がいいな・・・奈々ちゃん女なんだからさ、お民やってよ』って、結局そっちで決めてるんじゃない!」
 会場に初めて浪曲を聴くという人が多いとみて、曲師の沢村豊子を紹介。浪曲三味線には譜面はなく、曲師は浪曲師の様子を見ながら即興で三味線を弾いて行くということを説明してみせた。
 『清水次郎長伝 お民の度胸』は、石松が都鳥一家に貸した金を取り返そうと乗り込んだものの、十人もの相手にだまし討ちに遭い、七五郎とお民の家に逃げ込む。追って来た都鳥一家に、ふたりはここに石松はいないと突っぱねる場面。啖呵を切るお民と、亭主の威勢良さに惚れ直すお民の心情を浪曲で聴かせた奈々福。華のある浪曲師だ。

 トリの桃月庵白酒
はインフルエンザの病み上がりだそうだ。「痩せましたでしょ?」と言われても、それほどわからないが3キロ痩せたそうだ。やはり何も食べないでいると人間は痩せる。
 今日の出演者のなかで唯一、ネタ出しがなかった白酒。なにをもってくるかと思ったら『明烏』が始まった。
 白酒の『明烏』の特徴は、最初に時次郎をとことん子供にしてまうところ。蝶々を追いかけて行ったら見知らぬ場所に行ってしまい、子供に連れて帰ってもらったというのは究極過ぎて可笑しい。これが吉原に行って、源兵衛と多助相手に二宮金次郎を持ち出すというドタバタを経て一夜明ける。すると一皮むけた時次郎の方がすっかり大人になっていて、泣いたり怒ったり、甘納豆を盗んだりする二人をたしなめる。この逆転が見事で可笑しさを増すラストになっている。
 いろいろとネタを持っている白酒だが、なかでも『明烏』は今やすっかりオハコになった気がする。

1月26日記

静かなお喋り 1月25日

静かなお喋り


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