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客席放浪記

第五回読売あいえす寄席昼公演

2015年10月10日
読売IS

 [人形町末広]の跡地に建つ[読売IS]が毎年この時期に行っているこの会も、もう五年目。すっかり定着したようだ。

 白酒の一番弟子、桃月庵はまぐりが、一番太鼓実演のあとに、再び高座に上がる。『堀の内』。前座修業頑張ってね。

 「落語家なんて傍から見ていれば楽そうだと思いましたが、入ってみれば、やはり楽な商売で、現に破門にでもならなければ自分から辞めていく人はほとんどいない」と桃月庵白酒が話し始めた。一席目は会場近くの浜町が舞台ということもあるのだろうが『転宅』。落語家同様、傍から見ると楽そうな商売の泥棒が出てくる噺。白酒の『転宅』の泥棒は、女性にモテたこともなく、「男友達もいない」という可哀そうな男。泥棒に入った家で女にコロッと騙されてしまう。ますます可哀そうになってしまうけれど、泥棒じゃあなぁ。それでいて白酒が演ると、どこかこの泥棒、カワイイ。泥棒はあまり他人と関わらないですむ職業。しかも友達もいないというこの男。人間との付き合いに慣れてないという下地が効いてるね。

 柳貴家小雪の太神楽。五階茶碗、ひとつ毬、傘回し、皿回しという四つの曲芸。傘回しでは読売ISの社長さんに毬を投げてもらって見事にキャッチ。

 白酒のもう一席は『井戸の茶碗』。のちにそれが井戸の茶碗だとわかることになる千代田卜斎の茶碗を、娘が高木佐久左衛門のところに届けたということにして、そのときふたりがお互いを見初めたというように変えている。なるほどこれなら噺の運びがスムーズだし現代的になる。引っかかりなくスッキリするし、後味もいい。

 今、白酒を二席聴けて、色物まで付いて1000縁は破格。

 演目は最後に電光ボードに表示された。社長さん含め社員が総出で手作りの寄席。お客さんにも実に親切な対応が感じられる。こんな落語会は、ちょっとほかにはない。うらやましいと、つくづく思う。

10月11日記

静かなお喋り 10月10日

静かなお喋り

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