若手特選会 三遊亭馬遊の会 2015年3月26日 お江戸日本橋亭 開演時間に遅れてしまって入場したら、客席はお客さんでいっぱい。前の方の座椅子席に空いているのを見つけて座る。私の目当ては仲入り前の、夢吉、今輔、竹丸だが、今日は仲入り後に遊馬が二席やる。どうやら遊馬に付いているお客さんが押しかけたらしい。前座が三人も出た様子で、夢吉の高座に間に合ったのはよかった。 この春、真打昇進する三笑亭夢吉。先日、手を骨折したそうだが、ギブスも取れたのだろうか? 「8000円もするといういお酒をもらって自転車に乗っていたらコケまして、日本酒を持っていた方の手をかばったら反対の手を骨折してしまいました。治療費が12000円」。夢吉の『疝気の虫』を聴くのは、これがおそらく三回目。すっかり得意ネタにしたようだ。虫の「アジャラカライスのキューライス」は夢吉がやると、なんともカワイイのだが、途中で虫の人間に対する悪意が噴出する所が、もっと可笑しい。「人間め、この野郎。ざまあみろ。人間、地獄に落ちろ!」。この噺のオチはシモネタなのだが、幼稚園児の女の子ふたりがキャッキャッと喜んでいた。ほんとにわかったのかね? 古今亭今輔は、マクラで群馬ネタ、クイズネタをたくさんやった。今日のお客さんはとても暖かくて、何を話しても反応があるし笑いが来る。演者もやりやすそうだ。最近よくかけているらしい『雑学刑事』も、よく受けていた。 桂竹丸は地噺が得意な人だけあって、マクラも面白い。今日はとうとう漫談だけに終始してしまったが、面白かったなぁ。「今、東京の落語家500人。それがさらに毎月まだ入って来るんですよ。入社試験に落ちた人が多いのかなぁ」から始まり、昇太の六人の弟子の話。自分の弟子の話。そこから自分の師匠米丸の話にまで話題が広がる。「うちの師匠、米丸は先代今輔に弟子入りして古典はやらなくていいから新作をやりなさいと言われて新作だけやった人。今輔から自分の作った落語を十数席教わって、『君に上げます』と言ったそうです。それじゃあ自分はこれからどうするんですかと言われて、『また作ればいいんですから』と答えたそうです。それで私も師匠に、『師匠の作った噺、私にください』と言ったら、『君にはあげられないよ』と言われました」 仲入り後は三遊亭遊馬。一席目は『長屋の花見』。鳴り物も入ってにぎやかに。あまり入れ事をしないオーソドックスな芸風。それでも客を引き付ける面白さをこの人は持っている。スジがいい人だな。 客席放浪記表紙 ヒザが林家花の紙切り。鋏試しの『舞妓さん』のあと、お客さんからのお題で『花見』『大塚家具』『三遊亭遊馬』。大塚家具は、ビル街を切りぬいて「この真ん中のが大塚家具の本社ビルです」。アハハハハ。 三遊亭遊馬のトリの噺は『粗忽の使者』。こちらもオーソドックスながら面白く聴かせる。最後のくぎ抜きで尻捻られて「ひさかたぶりに感じるこの快感!」とめを見開いて叫ぶ表情は、抜群の可笑しさ。 満員の暖かいお客さんにも助けられて、いい会になったね。 3月27日記 静かなお喋り3月26日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |