2012年2月22日『雪やこんこん』(紀伊國屋サザンシアター) 雪深い地方の大衆演劇の芝居小屋の楽屋が舞台。当然、畳敷きの広い和室という設定だから、どうしても床に座った演技が中心になる。こういう芝居、関係者の方は意識なさっているのかどうかわからないが、客席から見にくくなるということを計算に入れているのかどうか。前から三列目、上手壁ぎわの席に座ったのだが、前の人の頭が邪魔になって、役者の演技がよく見えない。こういう設定の芝居を演るなら、舞台はもう少し高く作ってくれないと困る。 井上ひさしには、こまつ座という劇団があり、自分の死後も作品を上演し続ける母体がある。組織としてもしっかりしているらしく、動員力もあり、お客さんも多い。 この芝居に出てくる中村梅子一座は女剣劇の一座。経営難らしく、座員も一人減り、二人減り、今では六人。この一座と旅館のおかみとの物語なのだが、なにしろ役者が出てくる芝居。しかも井上ひさしともあれば一筋縄であるわけでもなく、話が二転三転のどんでん返しが用意されている。一幕目で「そんなバカな」と思わせる、『瞼の母』のパロディかと思わせるところも、最後まで行くと、納得せざるを得ないような作りになっている。 今、芝居では食えないというのが常識のようになっているが、きっとこまつ座は、うまく役者も裏方も芝居で食べられているのではないかと思えてくる。だから何はあっても芝居を演るのは楽しいといった結末も、こちらも安心して観終えて、拍手して、帰ることができる。貧乏しても芝居が出来ればいいというのが、現実とシンクロしてしまっている芝居だったら、「それはそうなんだろうけどね」と、心残りで帰ることになるのだから。 2月23日記 静かなお喋り 2月22日 このコーナーの表紙に戻る |