第六回 夢一夜 2012年11月30日 日本橋社会教育会館ホール 春風亭一之輔、三笑亭夢吉の二人会。一之輔がマクラで語っていたが、これは自分たちの自主企画ではなく、オフィスエムズの興行の一環。つまり客集めの負担が無い。自分たちで、チラシ作りから、DM発送、チケット販売、当日のセッティング、進行までやるとなると負担になり、そのうちに自然消滅ということになりかねない。興行主から声をかけてもらえるのは、いいよね。 開口一番前座さんは春風亭吉好で『動物園』。頑張ってね。 珍しいネタをけっこう持っている三笑亭夢吉が、いきなり『殿様団子』を持ってきた。芸協ではたまに耳にすることがあるこの噺、殿様が団子屋を始めるという変わったネタ。手鼻をかんだ手で団子を丸めるのが可笑しくて可笑しくて。なんか殿様だとあまり汚いという感じがしないんだよなぁ。 春風亭一之輔は今日まで池袋演芸場昼の部のトリ。真打昇進した年にトリを取れるなんて、そうあることじゃない。一之輔人気はたいしたものだ。「今日が千秋楽だったんですよ。千秋楽はトリを取っている者が楽屋に残っている者にご馳走をするという慣習がありましてね、お客さんが『打ち上げで飲んでください』って祝儀袋を置いて行った。その祝儀袋をね、弟弟子たちがジッと見ているんですよ。それで、その祝儀袋を渡しましてね、私はいかれないけどみんなで飲んでくれって。で、私はここでまた仕事。さっきメールが来まして『盛り上がってマース』って(と、ため息をついてみせる)」。金の話が出たところで『夢金』へ。女を殺して、女の持っていた金を山分けしようと侍に持ち掛けられた船頭。あまりのことに震えがくる。「震えていると思うでしょ。これは自分の意思で小刻みに震わせてんだい!」 仲入り後は春風亭一之輔から。このあとのウチアゲで夢吉とふたりで話すのが楽しみだと話しながら『河豚鍋』へ。これからの季節、いいねぇ。そういや、ここ何年もふぐ食べてないなぁ。いつもこの噺を聴いて気になるのが、この噺ではポン酢につけないのかなぁという事。ポン酢あっての河豚鍋だと思うのだが。 トリは華を三笑亭夢吉に持たせた形。おっ、『睨み返し』だ。先代柳家小さんの十八番だった。師走になると必ずかけていた。これがまた小さんにうってつけの噺で、あの真ん丸な顔で睨まれると、怖いというのか可笑しいというのか、それはもう絶品だった。ついつい小さんを思い出してしまう。夢吉もよく演っていたけど、あれだとなんとなくヤクザになっちゃう。下から見上げる形にしたのはいいのだけどねぇ。ヤクザとは違うんだなぁ、小さんのは。夢吉さん、どこか人柄の良さが見えちゃう。とはいえ、最近演る人も少なくなった噺だから、これからも大切にしていってね。 12月3日記 静かなお喋り 11月30日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |