May.4,2001 早くオウチに入りなさい!
金沢の街は、犬や猫を飼っている人が多いという。そういえば、犬を散歩させている人や、猫が道を横切る姿をけっこう目撃した。
もともと街中で猫を見かけると立ち止まってジーッと見てしまうタチなのだが、チェリーが死んでからますますヨソの猫を眺めている時間が増えた。猫というのは、街中を突然に動物園に変えてしまう。こんなに安上がりな動物の行動観察の機会はない。
金沢の街を歩いていたら、浅野川のほとりにある、ある一軒の民家の前に猫が一匹いた。ちょうどお散歩から帰ってきたところらしい。あいにく玄関は閉められてしまっていて、家に入れなくて困っている。ほどなく家の主人が出てきて戸を開けてあげたのだが、猫は今度はご主人に甘えている。「さあ、入りなさい」と言うのだが、いつまでも入ろうとしない。私たちが「おいで、おいで」したからなのか、こっちにも興味があるようだ。家に入ろうかどうしようか迷っている。
やがて隣の家の人が、やってくる。するとこの猫、その隣の人にも興味を示して、そっちの方へ歩いていく。よっぽど懐っこい猫なのだろう。私たちが「おいでおいで」すると、今度はこっちの方を見る。こういう猫は、ちょっと珍しい。
猫の気まぐれというのは、いつ、どこでもおんなじ。人間同士での付合いで、気まぐれな奴は敬遠されがちだが、猫の場合は別。この気まぐれに付合っているのが妙に快感なのは何故なんだろう。
いつだったか、やはり散歩から帰ってきて、なかなか家に入ろうとしない猫を主人がジレている姿を目撃したことがある。「早く入りなさい! 早く入りなさいってば!」と言ってこの主人、猫をムンズとつかむと、家の中に放り込んだ。この主人の気持ちも分かる気がする。