January.4,2002 猫だ!パーク

        猫に触りたい―――不思議なもので、一度猫を飼ってしまうと猫に触るという行為は、妙に心休まるものになってしまう。チェリーが死んでから、ときどき無性に猫を触りたくなる。ところが街を歩いている余所の猫は、まず触らせてくれない。そばへ寄っていくとたいてい逃げてしまう。野良猫は用心深いから、もっと無理。去年の秋に近所の野良猫が子供を産んで、子猫がうろついていた。この子猫たちはまだ世間がわからなかったとみえて、よく触らせてくれた。ところが猫の成長は早いもので、半年も経たないうちに親と同じ位の体格になり、それと同時に用心深くなって、そばに寄ると逃げて行ってしまうようになった。

        なんとか猫に触れないものかと思っていたら、あるんですね、これが。千葉の先端、館山の手前に富浦というところがあって、ここに[猫(ニャン)だ!パーク]なるところがあるのを知った。東京から電車に揺られて2時間近く。富浦の駅に初めて降り立った。地図を見ながら歩くこと25分。ガイドブックでは徒歩15分としてあったが、15分は相当な早足であろう。海岸沿いの国道から田んぼや畑のある道に折れて、しばらくいったところに[猫だ!パーク]はあった。入場料を払うと、入口のところで霧吹で消毒薬を掌に噴霧された。猫に黴菌がつかないようにということだ。

        猫が出て行かないように、二重の扉構造になっている入口を入ると、そこは放し飼いの猫が100匹以上いる猫の動物園だった。休日とあって、お客さんの数も多い。猫たちは気ままにここで生活をしている。寝ている猫も多いが、猫の方でもこんなにたくさんの人間に驚いているのか、ジッと見つめ返してくる猫も多い。ジッとしている猫はたいてい人間に体を触らせてくれる。頭や体を撫ぜると、気持ちよさそうにしている。まだ若い猫などは、じゃらすと知らない人なのに反応する。最も人懐こい猫は、椅子に座っていると膝に登ってきて落ち着いてしまう。

        なんでこんなに人懐こいのだろうと考えていたら、どうも外に出さないからではないかと思えてきた。完全に家の中だけで生活させ、入ってくる人間もみんな基本的に猫嫌いはいない。人間に対する恐怖心がないのだと思う。また、これだけの猫がいると猫臭さがあると思っていたのだが、消臭が施されているのだろう。あまり臭いが気にならない。

        私がいままで飼った猫は全て捨て猫として迷い込んできた雑種ばかり。それが、ここにはペルシャだろうが、シャムだろうがアメリカン・ショートヘアだろうが、みーんな触り放題。猫は好きだけれど、そんなに飼えない。でも一度でもいいからそんな高級な猫を触ってみたいという人にはたまらない場所だ。

        ここを知ったのは、テレビのワイドショウをたまたま見ていたら、ここにいるメインクイーンの[くじらちゃん]が出ていたから。もっとも大型な猫であるメインクイーンの中でも、このくじらちゃんは大きい・・・というよりもデブ。中に入ってすぐに目に付いた。ベンチの上の籠の中で仰向けになって寝ていた。いつも舌を出しっぱなしなのが特徴。寝ているときは何をされようが平気で寝ているということだったが、人だかりがして、みんなに撫ぜられているうちに、ムクリと起きあがった。体が大きいくせに動きは機敏。広い部屋の中央にある建造物のテッペンにジャンプして、あたりを見回した。でかい! それに太っている。腹が地面に着きそうになって歩いている。足がかりをたどってまた降りてきたが、ドス、ドスっと音がする。飼育係の人の話では、くじらちゃん風邪をひいているそうで、別室に入っていってしまった。

        気がついたら1時間くらい、ここにいたことになる。中には一日中いる猫ずきさんもいるにちがいない。


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