August.12,2002 猫と水

        猫は水に濡れることを嫌がる。何回か猫の体を洗ってやろうとしたが、猛烈な抵抗にあって断念した。その割には猫は清潔好きで、いつも自分で体中を舐めてきれいにしている。かと思うと、外で地面に転がって泥だらけなって帰って来たりする。よくわかんないのが猫。

        水に濡れるのは嫌がるが、水はよく飲む。ただし飲み方はヘタ。舌ですくいあげて咽喉の奥へ送りこむようにしてペチャペチャと飲んでいる。おそろしく効率の悪い飲み方で、見ていてじれったい。もっとゴクゴクと飲めないものか。

        一回に飲む量は少量のような気がするのだが、それでもいつのまにか、猫の水容器の水は無くなっている。人の前に来て、さかんにニャーニャー訴えているときは、水が無いということが多い。

        猫には、いつも新鮮な水を与えるようにと本などには書かれているが、これも疑問。というのも、調理場で、防火も兼ねていつでも汲んであるバケツの水が好きで、ペチャペチャやっていることが多い。そんなの飲まなくてもと、新しい水道の水を汲んであげても、そちらの方は見向きもしない。雨水も好きだ。道路の水溜りの水を喜んで飲んでいる。

        全身真っ黒だったクロは、当時飼っていた金魚に目をつけた。最初は金魚鉢の中で泳ぐ赤い物体に興味を持ったのだろう。横から覗きこみ、やがて上からも覗きこんだ。前足を鉢の中に入れる。水に濡れるのがイヤなクロは、その瞬間プルプルと前足を振って水を払う。しかし水に濡れるのがイヤなことよりも、金魚への興味が勝った。もう、一回濡れてしまうとどうでもよくなるのだろう。バシャバシャと金魚鉢を引っ掻きまわし、金魚を外へすくい出す。こうなると野生というのはたいしたもので、この金魚食っちまいました。

        こうなると猫が金魚を食うところがもっと見たくなってきた。金魚を買って来ては金魚鉢に入れ、猫が金魚を食べるところを見ていた。そのうちに、やっぱり残酷だなあと思いはじめたのは、金魚は観賞用のものという頭があるから。それなら人間も食用にしているドジョウならと思い始めたのも、今から思うと勝手な言い分。生きたドジョウを買ってきて金魚鉢に入れ、クロの前に差し出した。興味を持ってまたバシャバシャやっていたが、どうもドジョウは気持ち悪かったらしい。食べないのだ。以来、興味を無くしたクロは二度と金魚鉢に触れなくなった。

        わかんねえんだよな、猫って何考えてんだか。





ちょっとピントが合わなかったけど、
銀座の裏通りでヘタッていた猫。
「夏ばてかい?」と声をかけたら
「ウニャー」と鳴いて起き上がりかけ、
また、ドテッと横になってしまった。
夏でも毛皮を着ている猫は辛いだろうなあ。


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