September.12,2002 猫の爪砥ぎ板

        江戸半太くんが、CAGE`S TAVERNの『おあとがよろしいようで・・・』8月27日付けで書いているように、猫というやつは、どうも人間の思うように動いてくれない。せっかく猫のためにと思い買ってきたものでも、気に入らないものは絶対にイヤだという態度を示す。この「ぜっっっった――いにヤダ!」という態度は、まず犬にはあり得ないことで、犬ならイヤでも、一生懸命にご主人様におべっかを使うことになる。

        猫グッズを作る業者の方でも、いろいろと知恵を使うのだろう。こういうものを作れば猫は喜ぶだろうと考え、いろいろな商品を出してくる。実際に猫を使って実験もしているんだろう。こちらも、そんな商品を見て、これは面白いと思って買ってくる。ところが、まずほとんどの場合は空振りに終わる。猫によっても、それぞれ性格が違い、興味を示すやつと示さないやつがいるのだろう。猫の性格は一律ではないのだ。
        猫というやつを飼っていて一番困るのは、猫の爪砥ぎである。前足の爪が伸びてくると、柱や絨毯や畳でバリバリとやる。これは堪らなかった。チェリーが死んでから、畳は全て取り替えたので、ようやく我が家の畳は毛羽立たなくなったが、絨毯はまだ当時の跡が残っている。最悪なのは柱。過去三代の猫によって削られ、下の方はボロボロになっている。畳や絨毯と違って取り替えるわけにもいかない。

        ある日、猫の爪砥ぎ板というものを見つけた。これを与えれば、ここで爪を砥ぐようになるというのである。これは助かる。喜び勇んで購入。さっそく猫に与えてみた。ところが、チラッと目を走らせただけでまったく興味を示さない。強引に連れていって、前足を持って強引に爪を砥ぐマネをさせたのだが、「にゃーにゃー」嫌がっているばかり。この爪砥ぎ板には、マタタビが塗ってあるので、今度は強引に鼻先を板にくっつけさせたら、見事に酔っ払ってしまった。ヨダレを垂らしながらペロペロと舐め、陶然としている。もっとも猫がマタタビに酔っている時間なんて短いもので、やがて素面に戻り、トコトコと歩いていってしまった。

        マタタビの匂いが効くのは、それほど長くない。やがて匂いはまったくしなくなってしまったらしい。柱で爪を砥いでいるところを見かけると、強引に引き剥がして爪砥ぎ板のところに連れていって、「ここで砥げ!」と、爪を爪砥ぎ板に擦りつけてみせるのだが、「にゃー、にゃー」と嫌がるばかり。こうなったら強行手段だと、柱に爪砥ぎ板を縛りつけてみたが、その柱は使わなくなり、別の柱でバリバリやりはじめた。
結局は人間側の完敗であった。ほどなく、この爪砥ぎ板はゴミ箱行きとなった。

        いろいろと人間関係で窮屈な思いをしている我々人間にとって、この猫の「ぜ―――――ったいに、ヤダ!」という態度は、うらやましくも思うのだ。




7年前にイスタンブールのレストランで見たキジネコ


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