June.27,2000 ありがとうございました

        本日、明治座千秋楽。今月は高橋英樹座長公演『男の紋章/桃太郎侍』でした。高橋英樹様、江原真二郎様、坂口良子様、鈴木瑞穂様、青山良彦様、谷幹一様、川辺久造様、植松鉄夫様、藤森大樹様他の皆様からご注文をいただき楽屋までお蕎麦をお届けいたしました。ありがとうございました。知り合いの者が、今月の公演を見に行き、とても良かったと申しておりました。『桃太郎侍』はともかく、かつての当たり役『男の紋章』は私も是非見に行きたかったのですが、都合がつかず、果たせませんでした。来年は、是非拝見させていただこうかと思っております。高橋様は、舞台で華を感じさせることができる、数少ない役者さんだと、かねてから感じております。末永いご活躍を期待しております。


June.23,2000 むむっ!

        たいへんだあ! そ、そんなことがあっていいのかあ!?

        先週のこのコーナーで、近日開店のハンバーガー屋の店員募集ポスターのことを書いたでしょ。ひょっとして『サタデー・ナイト・ライヴ』の[オリンピア・レストラン]なんじゃないかって冗談で書いたやつ。あのハンバーガー屋、いまだにオープンに向けて準備中なんですがね、何と何故かは不明なのだが、今、店の前に『ブルース・ブラザース』のポスターが貼ってあるのだよ。

 

        店名が[BROZERS`]だということも判明。BROTHERS`ではなくて、BROZERS`。別にスペルを間違えたわけじゃないだろうから、これって英語じゃないのかな? とするとドイツ語? イタリア語? ふふふふふ、ギリシャ語だったりして。


June.21,2000 最強にして最凶だったネズミ

        実のところ、換気扇弾き飛ばされネズミは、これが最初ではない。ちょうどいいから、ここいらで私が最もてこずったネズミの話をしようと思う。もう、7年位前のことだ。恐ろしく頭のいいネズミが住みついてしまったことがある。換気扇が回っていない時を狙って出入りする。配電盤のわずかな隙間を使って、天井裏へぬける。トリモチ作戦も、巧妙にくぐり抜ける。現在では、ネズミの気配を感じてから1週間以内には捕獲できると自信持っている私だが、あのころは、まだトリモチの仕掛け方も未熟だったのだろう。黒っぽいネズミで、けっこう大きかったから、良く憶えている。

        闘いが、3ヶ月経とうという頃だった。私の気持ちとしては、万策尽きたという感じだった。その日、早朝に調理場に入った私は、「また今日もトリモチに掛かってなかったなあ」と落胆して、トリモチ・シートを撤去し、換気扇を回し、釜に火を点けた。

        何を勘違いしたのだろう。しばらくして、くだんのネズミが換気扇口から外に出ようとして、回転している羽に激突。弾き飛ばされた。今回と同じである。ただ、この時は、水の中に落ちたのではなく、真下に落下。そのまま気絶してしまった。何かネズミを叩く得物はないかと辺りを見回しているうちに、ネズミが息を吹き返した。落ちた所が釜のステンレスの上。このステンレスは、相当に熱くなっている。おそらく火傷したに違いない。バッと起き上がると、開いていた裏口の扉から外へ逃げていった。

        う〜ん、逃がしたか! それにしてもドジな奴だなあと家族で笑っていた。昼近くになった頃である。猫のチェリーが散歩から帰って来た。調理場にいた私は、チェリーに「お帰り」と声をかけた。そして凍りついてしまった。チェリーが何か咥えている。しかも大きい。「ネズミだ!」。2階に駆け上がるチェリーを追って、私も後に続いた。このチェリーという猫、小さなネズミだと食べてしまう野生を持っているのだが、大きな奴は持て余すらしくて、ちょっと虐めると、後は飽きて放し飼いにしてしまうのだ。

        やっぱり、換気扇に激突したのと、火傷を負ったのが、相当応えたのだろう。ネズミの動きが鈍い。チェリーにいいようにいたぶられている。チェリーはネズミを爪で引っ掻き、口に咥えて宙に投げ上げる。

        もっと玩具にさせといてあげたかったが、なにぶん開店時間が迫っている。しばらく放っておいてから、「チェリー、もういいだろう?」と言って、チェリーを部屋から出し、父のゴルフ・クラブを使って止めをさした。自分が捕まえてきた獲物を横取りされたチェリーと、大切にしているゴルフ・クラブをネズミを叩くために使われた父から、一斉に抗議の声が上がったが、仕方ないもんね。

        それにしても、換気扇で重症を負って、火傷をし、猫に襲われ、人間にゴルフ・クラブで叩き潰される。何と不運な最後を迎えたネズミだったことか・・・!


June.19,2000 単独事故

        『グリーンマイル』に出てくるネズミに嫌悪感を抱いた人はいないだろう。若い女性など「かっわいいー」なんて言う。こういう人が、ひとたび実際にネズミを見たら、「キャー、やだー!」なんて言って逃げ出すんだろう。現金なものだ。だいたい、あのネズミ、やけに小さかった。もっと大きなネズミを使ったら、見る人の反応も違ってきたろう。

        先週のことである。いつも通り、朝4時30分起床。すぐに調理場に入った。まず最初の仕事は換気扇を回して、釜に火を点ける事だ。そのあと、仕込みの前のこまごまとした準備に入る。30分ほど経ったときだ。目の隅に、床を何かが走ったような気がした。ネズミか? 最近、天井裏で音がすると思ったが、ついに来たか!?

事故現場        

        気のせいかな?と思い、また仕事をつづけていると、尻尾を除いた体長20センチくらいのネズミが、写真上方のダクトの上にいるのが見えた。とっさに私は、手元にあった40センチほどのプラスチックのまな板を手に取った。これで叩き落としてやろうと思ったのである。

        次の瞬間、「ゲンッ!」という音がした。なんとネズミが、写真左上の換気扇に激突して弾き飛ばされたのである。飲食店の換気扇は、家庭用と違って大きい。モーターもかなり強力だ。指など入れたら骨折どころではすまないかもしれない。換気扇の先は網などついてないから、ネズミの絶好の侵入経路だ。このネズミもご多分にもれず、ここから侵入したのだろう。慌てて同じルートで逃げようとして、換気扇が回っていることを知らずに飛び込み、激突したというわけだ。

        弾き飛ばされたネズミは、きれいに弧を描いて、見事、写真左下の丸い水槽に尻を下にして落下。「よおし上がってきたら、まな板でぶっ叩いてやろうと身構えた。ところがシーンとしている。どうしたんだろうと思ったらば、5秒後くらいだろうか、水面が揺れた。ところがネズミは出て来ない。「?」。

        写真右下には、ダシ汁の入った容器が入れてある。しばらくして、この容器を上げてみたらば、ネズミの水死体が沈んでいた。なんと、この哀れなネズミは換気扇にぶつかって気を失い、着水後にしばらくして気がついたものの、そこは水中。しかも、けっこう高い温度のお湯の中。慌てて逃げようとしたが、水面が見つからず溺死したということらしい。

        今回ほど、簡単にネズミが捕まったのは始めて。私は直接何もしていない。ネズミが勝手に事故を起こし、死亡したのである。釜から出してゴミ箱へ。供養なんてしてやるものか! このあと大変だったんだからな! ネズミの落下したお湯を全部抜き、きれいに洗い直し、消毒。朝はホームページを作る時間も確保しなくちゃならないんだから、忙しいのだ。ケッ!


June.15,2000 気になるポスター

Attention please

OPENING

SOON!

Help wanted

WAITER/WAITRESS/KITCHEN

        これ、近所で、近日開店する予定のハンバーガー屋さんの店先に貼ってあるポスターなんですよ。白い紙に、マジックで手書きで書いてある。まあ、簡単な英語だから若い人なら解るだろうけれど、何で英語で書いたのだろう。日本語で書けばいいのになあ。ハンバーガー屋さんだから、洋風に洒落たつもりなのだろうか?

        それとも、外国人のスタッフが欲しいんだろうか、ここのオーナーは。英語のポスターってことは、日本語を話せなくてもいいという事なのだろうか? 日本語を話せないウエイターやウエイトレスなんて役に立つのか?

        すると、私の頭の中には、あのジョン・ベルーシが『サタデー・ナイト・ライヴ』で演った、伝説のネタ『オリンピア・レストラン』が浮かんできて、ニヤッとしてしまった。アメリカのギリシャ人ばかりが働くレストランで、ベルーシ以外は英語を話せないという設定。売っているものはチーズ・バーガーと氷で薄めたペプシ・コーラだけという、あの話。みんな知っているとは思うけれども、知らないという人、是非『ベスト・オブ・ベルーシ』というビデオに入っているから、見て欲しい。

        あのネタのことを、最初に宇多村さんに聞かされたときは、どこが面白いのか、さっぱりわからなかったが、実際に見てみて、あのオカシサは、やっぱり見ないとわからないと思った。あれはやっぱり説明不能だ。あまりのオカシサに、私は今だに年に2回くらいは再生して見ている。何回見ても飽きないし、そのたびに笑える。

        さて、ハンバーガー屋の開店が楽しみだなあ。店に入ると、本当にお客さん全員がチーズ・バーガーとペプシを食べていたりしてね。

        実はね、ウチの人気商品は、CMのコーナーに載せてあるように[ねぎせいろ]という商品でして、お昼どきなど、お客さんの80%位が、[ねぎせいろ]を食べている。ときどき、ふいに入ってきたお客さんに、「この店では、みんな同じものを食べているんですね」と言われちゃったりする。そのたびに、私の頭には、『オリンピア・レストラン』のネタが浮かぶのである。「あのー、月見そばください」「ノー・ツキミソバ。ネギセイロ!」 


June.12,2000 猫の死骸

        世の中には、本当の猫好きという人が存在する。私などは、自分のところで飼っている猫と、なんとなく共存しているだけで、他所の猫だと、懐いて来ないようなヤツは好きになれない。特に野良猫は、ウチのゴミを漁りに来てゴミ袋を破いたりするので、敵対関係にすらある。

        今年のゴールデン・ウイークだった。そんな、近所をうろついていた野良猫が近所の空地で死んでいた。朝方、発見したのだが、このまま放っておくと腐敗してしまう。あとが厄介だと思った。まず考えたのが、この空地の所有者に電話して排除してもらうということ。しかし、この土地はある石油会社の持ち物。電話しても、当然休みだろう。保健所に電話しても、やはり休みだろうなあと思いながら、その日は用があったので、出かけてしまった。夕方戻ってみると、猫の死骸がない。誰かが、しかるべき機関に連絡して始末したのだろうと思い、この日のことは、やがて忘れてしまった。

        この空地のすぐ前に酒屋がある。ビールを買いに行って、店のご主人と世間話をしているうちに、この野良猫の死骸の件が飛び出したのである。

        「あれは、まだ20代くらいの女の子だろうな。ウチに入って来るなり『段ボール箱をくれませんか』って言うんだよ。『どのくらいの大きさのがいいの?』って訊いたら、『このくらいの』って50センチくらい手を広げてみせた。『何に使うの?』って言ったらさ、『そこで猫が死んでる』って言うんだよ。それで見に行ったら、本当に猫が死んでた。『この猫知ってるの?』『いいや、ただ通りかかったら死んでいるのが見えたんだ』って言うんだよ」

        「それで、ちょうど猫が入るくらいの段ボールを捜してきてあげて、ついでに死骸をくるむタオルをあげてさ、段ボールの中に寝かせて渡してあげたの。『これからどうするの?』って訊いたら、『回向院まで持って行く』って言うんだ。回向院っていったら両国じゃない。歩いていったら20分くらいかかる。そしたら『タクシーで行きます』って言うんだよ。見ず知らずの猫の死骸を引き取って、タクシー代払って、寺で供養してもらうって言うんだからねえ。供養してもらうっていったって、タダじやないだろうし・・・。感心しちゃった」

        こういう人が、本当の猫好きというのだろう。私は逆立ちしたって、こういう人間にはなれないのではないか? ちょっと考えさせられた話だった。


June.8,2000 『星屑の町・長崎慕情篇』の楽しさ

        星屑の会の芝居『星屑の町』も、シリーズ第4作目。今回はサブタイトルが『長崎慕情篇』。おなじみ[山田修とハローナイツ]の面々(小宮孝泰、太平サブロー、ラサール石井、有薗芳記、でんでん、渡辺哲)が、長崎の中華ショウ・レストランを舞台に、またまたの大騒動の一幕。

        今回は、マンネリを嫌ってか、ハローナイツの話以外に、セカンド・ストーリーを持ってきた。それが、三田村周三がオーナーになっている長崎の中華ショウ・レストランの内部事情の話。後を継ぐ長男の菅原大吉(おなじみ)に妻の西山水木(怪演!)。愛人役の李丹と吉田愛弓。そして次男役にはナイロン100℃の三宅弘城。この役者も只者ではない。微妙な性格俳優的演技を見事にこなした。この話の中にハローナイツの再結成劇を盛り込むという、ふたつの話をうまく進行させて、芝居を盛り上げてみせた。傍から見ていると、この面子で採算が採れるのか心配になってしまうほどの豪華なキャストだ。

        一番驚いたのが、吉本の村上ショージの存在だ。あまりテレビを見ないので、村上ショージのことをよく知らないのだが、さんまと一緒にダメダメマンに出ている人でしょ? この人、テレビではひとつも面白いと思ったことがなかったのだが、さすが吉本の芸人さんだ。舞台に立つと、テレビで浮いていたような笑いが、ピタッと舞台に嵌る。この人、やっぱり舞台で笑いを取る人なんだ。テレビと舞台では、笑いのコツが違うのだ。冒頭で太平サブローとの漫才のようなやりとりになるが、ここの呼吸には息を飲んだ。これが同じことをテレビでやっても、つまらないんだよ。

        もう1ヶ所、太平サブローとラサール石井が、やはり漫才調のやりとりになるところがある。この辺の呼吸もさすが! どこまで台本にあるのか、自然な漫才のやりとりになっている。これはもう、普通の役者には出来ない、ふたりの芸人の間のようなもの。あとから聞いたら、この日のはアドリブが少し入っていて長くなっていたとか。

        この日は東京公演の千秋楽でもあった。終演後、小宮さんのご好意で、劇場近くの中華料理屋の2階での、ちょっとしたウチアゲのようなものに紛れこませていただいた。テーブル三つを占拠した会場のうち、ひとつは作者水谷龍二、でんでんを中心にした静かに芝居を語るグループ。2番目はラサール石井、有薗芳記、菅原大吉、三宅弘樹、李丹らの役者を中心としたグループ。この連中がラサール石井を中心に大いに盛りあがっていた。

        そして、私が紛れこんだのは3番目。小宮孝泰と明治大学落語研究会(オチ研)のOBのグループ。明大のオチ研と言えば、三宅裕司、コント赤信号、立川志の輔らを出した、伝説のサークル。話にだけは聞いていたが、実際にそのメンバー達に逢えるとは夢にも思わなかった。いやあ、このテーブルもオチ研のりで盛りあがりました。オチ研時代の裏話も聞けたし、酔うにしたがって、役者のギャラなんていう、ちょっと他所では聞けない生臭い話まで飛び出して、とても楽しい時を過ごした。

        それにしても、この『星屑の町』のような芝居は今、どういう位置にあるのだろうか? 肩の凝る演劇でもないし、コメディアンの大衆的な軽演劇てもない。どうやら好評のようで、客席は満員。シリーズ化されているこんな芝居、ちょっと他にはない。なにやら新しい日本喜劇の動きが生まれてきそうな気がするのだが・・・。見逃した方、来る6月28日深夜、日本テレビ系で放映されますので、興味のある方は見てください。

        小宮さんからの情報によると、どうやら、2年後に水谷龍二書き下ろしで、明治座公演をやる話が進んでいるという。キャスティングも『星屑の町』の出演者に近いものになるそうで、そうなると大劇場で新しい日本の喜劇が見られることになる。これは是非実現して欲しい! 座長候補には風間杜夫の名前があがっているそうで、これはもう、明治座が新しい演劇にチャレンジする面白い企画になりそう。昔、つかこうへいの『熱海殺人事件』での風間の熱演をいまだに憶えている私には、この企画、なんだかワクワクするような楽しみに満ちている。


June.3,2000 マンション管理組合理事会2

        その日、その場所に集められた6人は困惑の表情を浮かべていた。

        マンション管理組合の理事会の話なんて書いても、しょうがないと思ったのだが、前回こわごわ書いてみたら、面白がってくれた人が若干いたので、2回目の理事会のことも書いてみようという気になった。

        管理人からの報告、管理会社からの会計報告に続いて、その日の議題が話し合われた。その1、駐輪場の自転車整理の件。その2、CSアンテナの件。そして問題は最後の、その3、町会加盟に関してだった。

        去年の10月には入居が始まっていたとは言え、なんとまだ町会に入っていないことになっていたのだ。当然、町会費もまだ払っていない。町会側の申し入れにより、6月から正式に町会に加盟。町会費も支払うことになった。しいては、町会としてはマンション側から防犯防災委員という名前で、ひとり、窓口になる人を出して欲しいという要望があるという。

        管理会社の人いわく、「マンション中の人に声をかけて選出するわけにもいかないでしょうから、この中の6人から選ぶということでいかがでしょうか?」        

        沈黙。そして理事会の委員から、誰ともなく質問の声が漏れた。
「あのー、具体的にどういう事をするんでしょうか?」
「防災訓練とかですね・・・」
(ああ、消防団でホース持って走ったりするあれだ)
「年末の夜回り・・・」
(火の用心、マッチ1本火事の元、カチカチってやって町内を回るあれだ)
「夏の子供大会・・・」
(道路を通行止めにしてヤキソバを焼いたりするあれだ)
「年末の餅つき大会・・・」
(水天宮の前の道路を片側封鎖してやるあれだ)
「春の花見・・・」
(小さな公園にカラオケ持ちこんでやるあれだ)
「春と秋の交通安全週間の交通整理・・・」
(テント張って、横断歩道の前に立って旗振るあれだ)
「定期的にやる町内クリーン・アップ作戦・・・」
(日曜日に町内いっせいに道路掃除やってるあれだ)
「2年に一度のお祭り・・・」
(神田祭りのときに、お神輿を出すあれだ)
「まあ、ようするにボランティアみたいなものだと思っていただければ・・・・」        

        マンションとウチの店は、同じ町会に属している。この町に引っ越してきて25年、私は町会活動から逃げ回ってきた。仕事が忙しくて、それどころじゃないという理由もあるが、こういったことはどうも苦手なのだ。

        会議をしている部屋に、再び沈黙が訪れる。しばらくして、議長を務める理事長から、管理会社の人に質問が飛ぶ。
「普通、こういった役は、他所ではどうやって決めているのですか? またアミダクジとか?」(笑)
「まあ、一番多いのは、副理事長さんが兼任するのが一般的ですがね・・・」

        私以外の5人の理事並びに、管理会社の人、管理人さん、計14の瞳が一斉に私の顔にそそがれる。
「あ、あの、私ですね・・・。あの、私は・・・、えーと、あの」
『24の瞳』までいかなくても、14の瞳の圧力は強烈である。じっと私の出方を待っている。
「・・・・・・ははは、仕方ないですね。私がやるしかないようですね・・・」
14の瞳に、どっと安堵の光が灯る。
「それでは、この役は副理事長さんに兼任してもらうということで、よろしいですね」
理事長の一声。私以外のにぎやかな笑い声で、この日の議事は終了した。

        かくて、私、覚悟を決めました。それにしてもなあ、何にもしなくていいと思っていた副理事長の座だったが、こんな落とし穴があったとは! 何の事無い、副理事長って雑用係じゃないか! 6人の中で、こりゃあ一番仕事が多いぞ! しかも、ほとんど肉体労働奉仕。とんだ貧乏クジを引いてしまったのではないだろうか?

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